研究実績の概要 |
けいれん重積型(二相性)脳症(acute encephalopathy with biphasic seizures and late reduced diffusion; AESD)は小児急性脳症のうち最も頻度が高く、神経学的後遺症の率が高い臨床症候群である。現状では発症時にAESDと熱性けいれん重積(prolonged febrile seizure; PFS)あるいはAESDとは異なる病態による急性脳症との鑑別が十分にできないことが問題である。本研究では、安静時機能的MRI(resting-state functional MRI; rs-fMRI)が、AESDの早期診断、病態解明(脳機能ネットワークの異常)、治療効果判定、慢性期合併症(てんかん、知的能力症などの神経学的後遺症)の予後予測に有用かを検討することを目的とした。研究開始後は直ちに解析のための準備(PC、ソフトフェアの購入)と情報収集(学会参加)をおこなった。期間中の約3か月間には新規のAESD患者の受診はなった。AESDとは異なる急性脳症患者1名の受診があったが休日であり初回の緊急MRI撮像時にrs-MRIは得られなかった。rs-MRIは5-10分程度の追加で通常のMRI撮像時に加えることができるものの、休日夜間の緊急MRI検査時について今後検討が必要と考えた。新規の発症はなかったが最近になり慢性期(発症6か月)のAESD患者1名の経過観察の頭部MRI検査をおこなう機会があり、3テスラのMRI装置を使用しT1, T2強調画像, FLAIR, DWIに加えてrs-MRIについても問題なく実施しうることを確認した。慢性期の患者に対しては、seed-based analysisによりデフォルトモードネットワークの結合度を解析し、AESDに特徴的な脳神経ネットワークの障害パターンを検討する予定だった。
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