研究課題
若手研究
線維化は、全身の様々な臓器や組織に共通してみられる組織中の結合組織が異常増殖する現象であり、その進行により肝硬変・肝炎や心不全、慢性腎臓病など、多くの線維化関連疾患を引き起こす。これらの疾患の治療のため、線維化の詳しいメカニズム解明とその制御が急がれている。応募者は今回、この線維化を促進する分子として知られるCCN2や線維化の制御に関わる因子として、長鎖非コードRNA(UCA1)と糖尿病治療薬メトホルミンに着目した。そこで、本研究ではメトホルミンの新たな抗線維化薬としての可能性(ドラッグリポジショニング)と、UCA1を介した線維化のメカニズムの解明を目指す。
糖尿病治療薬メトホルミン(Met)による抗線維化効果と、CCNファミリー蛋白質2および非コードRNA(UCA1)の関与の有無を調べた。ヒト線維肉腫由来HT-1080細胞ではMet添加によるUCA1とCCN2の遺伝子発現の低下、特発性肺線維症患者由来肺線維芽細胞ではMet添加による一過的なUCA1とCCN2の発現誘導とその後のUCA1では非添加群と同程度、CCN2ではさらなる低下が見られた。ヒト軟骨肉腫由来HCS-2/8細胞ではMet添加でUCA1発現の上昇とCCN2の若干の低下が見られた。細胞種によりUCA1の応答性に差があるものの、Metは線維化促進因子CCN2の発現を抑制すると思われる。
今回の研究成果は糖尿病治療薬メトホルミン(Met)が線維化を促進するCCN2の発現低下に関与することを示している。一方、MetのUCA1発現への影響は細胞種によって異なり、線維肉腫ではMet添加でUCA1が減少した一方、肺線維芽細胞と軟骨細胞ではUCA1が誘導されたことは興味深い。我々の研究グループは以前にUCA1の軟骨細胞分化促進作用を報告しており、Metの抗線維化作用に加え、非コードRNA(UCA1)を介した軟骨保護作用がある可能性を示した点で学術的な意義がある。また、Metを抗線維化薬や軟骨疾患治療薬としてドラッグリポジショニングする基盤への一助にもなると考えられ、社会的な意義も大きい。
すべて 2022 2021 2020 2019
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (24件)
Microorganisms
巻: 1000 号: 5 ページ: 1-10
10.3390/microorganisms10051000
International Journal of Molecular Sciences
巻: 21 号: 20 ページ: 7556-7556
10.3390/ijms21207556
120006900771
岡山歯学会雑誌
巻: 39
Journal of Endocrinology
巻: 241 号: 2 ページ: 161-173
10.1530/joe-19-0022
120006801909
Scientific Reports
巻: 9 号: 1 ページ: 8041-8041
10.1038/s41598-019-44389-8
120006777525