研究課題
若手研究
膵癌の予後は極めて不良であり、治療成績改善につながるバイオマーカーの同定が必須である。末梢血などの体液から非侵襲的にサンプルを抽出するliquid biopsyが有望視されているが、膵癌診療における意義は不明である。本研究では、膵癌患者の末梢血中の遊離DNAと血中循環腫瘍細胞を前向きに追跡することで、liquid biopsyの有用性を評価し、既存の血液検査や画像検査で検出できない超早期の再発や治療効果を予測するマーカーを同定することを目的とする。更に診断時の組織サンプル(EUS-FNA検体)のゲノム情報と比較解析することで、治療抵抗性因子を明らかにし、予後改善につながる臨床応用を目指す。
2019年12月から2021年4月の期間に、膵癌17症例の末梢血から遊離DNA(cell-free DNA; cfDNA)を抽出し(平均濃度233.1pg/μl)、前向きに追跡した。長期間の追跡が可能であった症例では、いずれも一旦低下したcfDNAが再上昇に転じた。cfDNA由来の網羅的遺伝子発現解析(cfDNA-seq)の経時的変化に着目すると、ALK、BCL2L2、FGFR4など一部の遺伝子変異が、症例や化学療法前後に問わず一致していた。また、外科切除検体由来のDNA-seqとcfDNA-seqを比較すると、病状の進行と共に両者の遺伝子発現の差異が大きい結果であった。
非侵襲的に繰り返しのサンプリングが行えるリキッドバイオプシーは、組織採取が難しい膵癌において特に期待されている。実臨床において、血液を使用するがん遺伝子パネル検査が保険収載されたが、膵がん診療における有用性は定まっていない。本研究から、リキッドバイオプシーはサンプル採取の状況に遺伝子発現の結果が大きく左右されることが明らかとなった。すなわちリキッドバイオプシーの結果を解釈する際には十分注意を払う必要があり、今後の臨床応用の一助となる結果であった。がんの原発巣組織とリキッドバイオプシーにおける遺伝子変異の相同性についての更なる検討が必要である。
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