研究課題/領域番号 |
19K17434
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
篠田 崇平 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (00837693)
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研究期間 (年度) |
2021-11-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 膵癌 / FABP / FABP4 / FABP5 / 鉄 / 転移 / 浸潤 / 脂質代謝 / 鉄代謝 / 鉄キレート / 化学療法 / 鉄キレート剤 |
研究開始時の研究の概要 |
鉄はDNA合成に必須な元素で、鉄代謝をコントロールすることは有効な癌治療につながる。経口投与可能な次世代型鉄キレート剤デフェラシロクス(DFX)はリボヌクレオチドリダクターゼ活性を低下させるため、既存の抗癌剤であるゲムシタビンとGEMを併用することで相乗的な抗腫瘍効果を示すことを我々は報告した。この作用機序は、他の抗癌剤との併用でも相乗効果が期待できるため画期的な治療法になりえる。また、膵癌細胞株にDFXを投与することで、転移に関与する浸潤、遊走能の低下を示すことも確認している。本研究の目的は膵癌に対する鉄キレート剤を用いた抗癌剤感受性向上と浸潤・転移抑制機構を明らかにする。
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研究実績の概要 |
令和4年度の研究実績で報告したように、膵癌と脂質代謝に着目した基礎的検討を行っており、特にFatty acid binding protein(FABP) 4が膵癌細胞増殖に関与していること、その阻害薬であるHTS01037が膵癌細胞増殖を抑制することを確認し、第54回日本膵臓学会大会(2023.07.21.16:10-18:10. 福岡国際会議場 第5会場)ワークショップ6「臨床応用を見据えた膵臓基礎研究」で発表を行った。そこでの議論を基に、現在論文投稿の準備を行っている。 また、FABP4だけでなく、脂肪細胞などが分泌するFABP5が膵癌細胞増殖にどのような影響を与えるかについて解析を行っており、ヒト膵癌細胞株であるMiaPaca2やマウス膵癌細胞株であるKPC cellを用いてin vitroでの検討を行ったところ、FABP5投与群では有意に膵癌細胞増殖が亢進することを確認した。そして、マウス膵癌皮下移植腫瘍モデルにおいてFABP阻害薬であるBMS309403投与群(BMS群)は有意に腫瘍増殖を抑制することを確認した。しかし、FABPとその阻害薬がどのように膵癌増殖に影響しているのか、具体的な機序は不明な点が多い。近年では膵臓の脂肪沈着が膵癌発癌率に関与しているという報告も見られることから、肥満、脂肪細胞、FABPと膵癌の関係性を明らかにするために、我々は高脂肪食(HFD)を摂取させるマウス膵臓高度脂肪沈着モデル作成し、HFD群では有意に膵臓脂肪沈着が高度でmRNAレベルでFABP5発現が高いことを確認した。現在mRNAレベルでのさらなる解析を行っている。 また、本研究課題とはやや異なるが、ミネソタ大学留学中に取り組んだ膵癌に対するIFN-alpha発現腫瘍溶解性アデノウイルス+化学放射線療法の基礎的検討について論文報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画である鉄キレート剤を用いた基礎的研究だけでなく、膵癌と脂質代謝、特にFABPに着目した基礎的検討は順調に進んでおり、現在FABP阻害薬であるHTSが膵癌細胞増殖を抑制することについて学会発表を行い、それらについて現在論文投稿を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
鉄キレート剤が脂質代謝やFABPに及ぼす影響を解析し、転移抑制効果の評価を行う。 また、膵癌と脂質代謝、特にFABPに着目した基礎的検討で良好な研究成果が得られていることから、高脂肪食を与えたマウス膵臓高度脂肪沈着モデルでの高度脂肪沈着膵同所移植腫瘍マウスモデル群(HFD群)を用いて、鉄キレート剤、FABP阻害薬BMS309403を投与することで腫瘍増殖にどのように影響を与えるのかを解析し、得られた血液、病理組織検体を用いてmRNAやたんぱくレベルでの解析を行う。
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