研究課題
若手研究
当研究グループではこれまで、慢性炎症を背景とした遺伝子変異の生成・蓄積という観点から研究を行い、DNA編集酵素の異所性発現やDNA修復異常が炎症発癌に寄与していることを明らかにしてきた。しかし炎症発癌過程では遺伝子変異の蓄積のみならず、炎症細胞とのクロストークにより細胞増殖や血管新生が誘導される必要がある。Regnase-1は炎症性サイトカインmRNAの転写後調節により炎症を制御するRNA結合タンパク質であるが、発癌とRegnase-1との関連性についてはこれまでに報告されておらず、本研究では消化器系臓器における炎症発癌過程においてRegnase-1が果たす役割を明らかにすることを目的とする。
ヒト大腸癌細胞株に対しIL-1βによる刺激実験を行ったところ、刺激1時間後よりRegnase-1が速やかに誘導された。 Regnase-1が標的とするmRNAの探索を行ったところ、KIT, E2F2, CCND3, TNS4, DNMT3B, METといった複数の癌関連遺伝子が同定された。また腸管特異的にRegnase-1をノックアウトしたマウスでは有意な大腸腫瘍の増加を認め、Regnase-1は大腸で腫瘍抑制的に働いている可能性が示唆された 。RNA-seqにより遺伝子発現変動を網羅的に解析したところ、免疫・癌・代謝関連といった幅広い遺伝子群に変動がみられており、解析を継続中である。
消化器系臓器(胃、肝臓、大腸)における発癌は慢性炎症(慢性胃炎、慢性肝炎、炎症性腸疾患)を背景に発生することが知られているが、炎症性発癌の分子機構については未だ十分明らかではない。Regnase-1は炎症性サイトカインmRNAの転写後調節により、炎症を制御するRNA結合タンパク質である。しかしこれまでに炎症性発癌とRegnase-1との関連性についての研究、報告はなされていなかった。本研究により、炎症性消化器発癌におけるRegnase-1の役割の一端が解明されつつあり、将来的には炎症性腸疾患や、炎症を背景とした発癌の予防および治療に臨床応用されることが期待される。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (25件) (うち国際学会 3件)
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