研究課題
若手研究
胆管癌は診断時に切除不能で化学療法を行われる症例が少なくなく、適切な病勢予測マーカー、より有効な治療法が求められている。Macrophage inhibitory cytokine(MIC-1)は炎症や様々な悪性腫瘍で増加し、特に膵癌と胆管癌で高値を示すことが報告されており、我々は血清・胆汁MIC-1が早期胆管癌の診断に有用なマーカーであることを発見した。しかし、MIC-1の腫瘍に対する効果は、促進、またはアポトーシスによる抑制のいずれかで臓器ごとに異なっている。本研究では、胆管癌におけるMIC-1の効果を明らかにし、将来胆管癌の診療・治療に応用する。
Macrophage inhibitory cytokine-1 (MIC-1)はTGF-βスーパーファミリーの一種で胆膵癌で上昇することが報告されているが、主に膵癌で研究が進められてきた。しかし、本研究で我々はMIC-1は胆道癌細胞から分泌されアポトーシスを阻害し、腫瘍の増殖・浸潤を促進することを明らかにした。また、MIC-1を添加された胆道癌細胞株は抗癌剤に抵抗性を示した。さらに血清MIC-1とアポトーシスマーカーM30の組み合わせは早期も含めた胆道癌の良好な診断能を示した。以上より、MIC-1は胆道癌の有用な診断マーカーとなるだけでなく、潜在的な治療ターゲットになり得ると考えられた。
胆道癌は致死的な疾患であり、有用な診断・予後予測マーカーも存在しない。診断時には切除不能なことも多く、最も効果のみられる化学療法でも生存期間は満足のいく成績ではない。今回の研究結果からMIC-1は胆道癌の早期診断に貢献するものと考えられた。また、MIC-1は腫瘍の進行とも相関しており、予後予測マーカーとしても有用であった。MIC-1は腫瘍増殖を促進していたことからも、抗MIC-1抗体などによる胆道癌の治療の発展が期待できる。さらにMIC-1の胆道癌への作用を調べることにより、新たな診断マーカー、治療法を作り出すことができる可能性がある。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Cancer Cell International
巻: 22 号: 1 ページ: 250-265
10.1186/s12935-022-02668-x