研究課題
若手研究
心臓不整脈に対する治療としてカテーテルを体内に挿入して行うカテーテルアブレーション治療は広く普及してきている。しかし難治性不整脈は少なくなく、かつカテーテルを体内に挿入する事による合併症も解決されていない。我々は体外から心臓に粒子線を照射する事により心臓の電気生理学的、組織学的変化をもたらす事が可能ではないかと考えた。本研究では神戸大学と兵庫県立粒子線医療センターとが共同し動物の心臓に粒子線(炭素線、陽子線)照射を行い電気生理学的、組織学的変化の検討を行う。このエネルギー源を使用すれば体内にカテーテルを挿入する事無く不整脈治療が可能となるかもしれない。
体外から心室筋への中等量の炭素線や陽子線の粒子線照射は電気的障害や組織変化をもたらし、その変化は照射後3カ月の時点で明らかであり6カ月後まで維持されていた。今回の研究では照射範囲を大きくしたことにより心嚢水、照射部の皮膚変化や放射線肺炎などの周辺臓器への影響も確認することができた。これらの結果から難治性の心室性不整脈を持つ患者において中等量の炭素線、陽子線を心筋に照射する事により、その不整脈基質部位を変性させ、不整脈を減らす事ができる可能性が示唆された。この治療を行う時には、周辺臓器への被曝を避けるために照射範囲を可能な限り最小化する必要がある。
現在不整脈に対する治療として薬物治療やカテーテル心筋焼灼術などが進歩してきている。しかし難治性でかつ致死的な不整脈も存在し突然死などの原因にもなりうる。粒子線照射はカテーテルなどを体内に挿入する事なく、体外から照射が可能であり侵襲度も低い。今回の研究結果から心臓への粒子線照射が今後、難治性不整脈に対する革新的治療法となる可能性が示唆された。
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Journal of the American Heart Association
巻: 10 号: 7
10.1161/jaha.120.019687
120007033585