研究課題
若手研究
近年、糖尿病が大動脈径拡大に対して抑制的に働くというねじれの現象が観察され、糖尿病と大動脈瘤の負の相関関係が注目されている。糖尿病は、冠動脈疾患を始めとする動脈硬化性疾患の強力な危険因子であり、高血圧や脂質異常など動脈硬化のその他の危険因子を同時に有する事も多い。さらに冠動脈疾患や脳血管、末梢血管疾患の進行は大動脈瘤の有病率とも正の相関をすることがわかっている。それにもかかわらず、この負の相関関係が存在するが、その詳細なメカニズムは十分に明らかにされていない。本研究は、冠動脈疾患患者での糖尿病有無による大動脈径を比較検証することで、ねじれ現象の原因を詳細に解析し、そのメカニズムを探求する。
我々は、動脈硬化性疾患と正の相関のある大動脈瘤の発生が、動脈硬化の主要な危険因子である糖尿病と負の関係にあるというねじれの関係に注目し、冠動脈疾患患者の中で大動脈ならびに糖尿病がどのように関わっているか、さらには糖尿病に関わる種々の因子との関連ならびに生理活性物質の検討を行った。冠動脈疾患患者の血行再建の時相において、糖尿病は有意に大動脈径に影響していたが、石灰化の程度への影響は小さかった。一方それ以降の時相において、糖尿病は大動脈径拡大抑制よりも石灰化の進行に関与していた。本研究で得られたデータから大動脈壁に対する糖尿病の影響は動脈硬化の進展の時相により変化しうることが示唆された。
今回の検討で、糖尿病が動脈硬化進行の初期の段階で大動脈拡張と負の関連があり、後期の段階では大動脈石灰化の進行に正の影響を及ぼしていることが示された。大動脈壁に対する糖尿病の影響は動脈硬化が進行するにつれて変化している可能性があり、これは大動脈疾患、動脈硬化性疾患の病態を捉える上で、時相が重要であることを示唆している。このことは臨床並びに今後の研究において、さらには今後の動脈硬化性疾患、大動脈疾患に対する効果的な予防を含めた内科治療戦略を構築していく上で重要な概念となると考えられる。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
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