研究課題
若手研究
心筋梗塞などの動脈硬化性疾患は我が国の死亡原因の大きな部分を占めており、その病態解明は疾患の予防や治療成績の向上に不可欠である。循環器疾患の病態には、血管内皮細胞、平滑筋細胞、血液細胞など様々な系列の細胞が関与している。我々は、平滑筋細胞特異的に遺伝子を欠損させる目的でよく使われるマウスで、実際には血液細胞の多くでも遺伝子欠損が起きることを見出した。本研究はこれを発展させ、このような血液細胞の特徴や循環器疾患の病態形成に果たす役割を明らかにし、循環器疾患の新たな病態解明を目指すものである。
平滑筋細胞特異的Creマウスとして汎用されているSM22α-Creマウスでは、血液細胞でもCreリコンビネーションが生じることを見出した。SM22α-Creマウスを用いてIL-6の受容体を構成するgp130を欠損させると低酸素誘発性肺高血圧症(HPH)の病態が改善し、これはSM22α-CreによってCD4陽性T細胞で非特異的にgp130を欠損した結果であることが示唆された。実際、CD4-Creマウスを用いてgp130欠損マウスを作製したところHPHモデルの病態も改善し、CD4陽性細胞におけるgp130依存性サイトカインシグナルが肺高血圧症の病態形成に重要であると考えられた。
平滑筋細胞特異的Creマウスとして広く研究に使用されているSM22α-Creマウスで、実際には血液細胞のすべての系統でCreリコンビネーションが生じることを明らかにした。SM22α-Creを用いた実験結果は慎重に解釈する必要があることを示すものであり、学術的に意義がある。また、指定難病である肺動脈性肺高血圧症の病態形成にIL-6が重要であることはこれまでも報告されてきたが、本研究の成果は、その標的としてCD4陽性T細胞が重要であることを示すものであり、新規治療法の開発などの臨床応用へ向けた基盤となると考えられる。
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