研究課題
若手研究
近年、慢性腎臓病(CKD)患者では、サルコペニア/ フレイルが多発し、身体活動のみならず、CKDや心血管病の進展、生命予後にも大きく寄与することが明らかとなり、その対策は喫緊の課題である。本研究では、「CKD で蓄積する尿毒素の一つであるADMA が内皮障害による局所の血流低下、慢性炎症、インスリン抵抗性を介し筋委縮に関与し、サルコペニア/ フレイルの発症進展に密接に関与する」との仮説を立て、その検証を行う。さらには、新たな治療法確立のため、本病態における運動療法及びMyokineであるIrisinに着目し、その動態と治療標的としての可能性を探求することを目的とする。
CKD患者ではサルコペニア/フレイルが多発する。尿毒素であるAGEは酸化ストレス及び炎症を惹起し、内皮障害因子であるADMA等を介した臓器障害に関与する。本研究ではCKDにおけるサルコペニア/フレイルとAGEとの関連について検討した。透析患者ではフレイルを有する群でAGEが高値であり、運動機能及び身体活動度と負の相関がみられた。CKDモデル動物では腓腹筋へのAGEの蓄積がみられ、筋の形態学的変化、毛細血管の消失、ミトコンドリア機能異常を認めた。この変化はAGEアプタマー投与により改善を認めた。AGEは内皮機能を介して、サルコペニア発症・進展を抑制する新たな治療標的となりうる可能性が示唆された。
CKD患者における、サルコペニア/フレイルの病態及びその分子機序を明らかとすることは、CKD患者のQOL/生命予後/健康寿命の改善に繋がるだけでなく、医療費削減にも繋がり、社会的に大きな意味をもつと考える。本研究で、AGEがCKDにおけるサルコペニア/ フレイルの重要な発症因子であることが明らかとなった。AGEによる内皮障害を制御することで、サルコペニア/フレイルの発症・進展を抑制する新たな治療法の開発へ繋がる。
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Sci. Rep.
巻: 10 号: 1 ページ: 17647-17659
10.1038/s41598-020-74673-x