研究課題
若手研究
腎臓は単クローン性免疫グロブリンの主要な標的臓器である。最近、多発性骨髄腫の前段階で良性と捉えられてきたmonoclonal gammopathy of undetermined significanceの経過中に腎障害を呈した症例の疾患概念として、「monoclonal gammopathy of renal significance: MGRS」の呼称が提唱された。その病理像は多彩で臨床像も含めた全体像の把握が今後の重要課題である。当科には国内最多のMGRS症例の集積があり、MGRS症例の臨床病理像の詳細を明らかにしM蛋白の構造特性と病理病型との関連性を検討し高齢者医療に貢献する。
結晶性円柱腎症患者尿からλ型M蛋白を精製し、N末端アミノ酸配列を同定した後、骨髄血からcDNAを調整しこのM蛋白の完全長cDNAをクローニングした。更に尿から精製したλ型M蛋白を結晶化し、X線構造解析を行った。本腎症でのM蛋白の最初の立体構造解析例である。また、尿中に多量のκ型M蛋白を認めながら腎障害の軽度な骨髄腫患者尿からM蛋白を精製し、N末端アミノ酸配列を同定し骨髄血からcDNAを調整し、このM蛋白の完全長cDNAをクローニングした。尿から精製したκ型M蛋白の至適結晶化条件を検討した。また、λ型LCDD患者1例の尿からλ型M蛋白を精製し、疎水性の高い特徴があることを明らかにした。
本研究課題と関連する腎症の臨床病理学的解析を進め、更に、種々の病型を呈した患者尿からM蛋白を精製し、構造解析に進展があった。M蛋白の構造特性と病理病型との関連性を明らかにすることは、非侵襲的な診断法の開発に繋がり、創造性の高い研究であった。高齢者医療で特に重要な血液・腎疾患分野で、診断と治療の向上に貢献をはかることは、MGRSは高齢者に多いことから、高齢者医療への波及効果も大きい。これらの稀な疾患の検討は、臨床病理学的な観点の解析からも、各疾患群の特徴や腎予後なども明らかになりつつある。
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Kidney International Reports
巻: 5 号: 9 ページ: 1595-1602
10.1016/j.ekir.2020.06.026