研究課題
若手研究
大腸がんは多様な生物学的特徴を持つ疾患であり、発がんの原因となるゲノム不安定性も症例毎に異なる。大多数の大腸がんで起こっているゲノム不安定性は、染色体異常を引き起こす染色体不安定性である。染色体は生物種で大きく異なることから、染色体異常によるがん化メカニズムの詳細はヒトの細胞を用いて示すことが望ましいが、ヒトの正常大腸細胞に染色体異常を導入することはこれまで困難であった。本研究では、多能性幹細胞から臓器への分化技術を用いることで、ヒト大腸細胞への染色体異常導入を容易とし、染色体異常による発がんメカニズムを詳らかにすることを目的としている。
バイオリソースから譲渡を受けたヒトiPS細胞株数種について核型解析を行い、正常核型のiPS細胞株を選定した。培養皿上で、組み換えタンパクや阻害薬を添加し、大腸オルガノイドへ分化させる条件について、至適条件を設定した。正常核型のヒトiPS細胞に微小核細胞融合法を用いて、左側原発大腸がんで高頻度に認められる染色体異常を有するiPS細胞株を樹立し、in vitroで大腸へと分化させた。正常核型iPS細胞から分化させた大腸オルガノイドと同様に、染色体変異iPS細胞由来のオルガノイドは、間葉系細胞に囲まれた、内腔に粘液を持つ上皮様組織を構築し、一部に異型と考えられる構造を示した。
結腸直腸がんでは遺伝子変異のほかに染色体数の異常を、特に原発巣が肛門側に近い症例で高頻度に認める。大腸の発がんやがんの進行に染色体異常がどのように影響しているかを解明することにより、新しい治療法や予防法へとつながる可能性がある。本研究では、染色体異常をもつ細胞を用いて作成した大腸組織の一部が、正常と比較すると異常と考えられる構造を示していたことから、新たな大腸発がんメカニズムを明らかにできる可能性がある。
すべて 2021 2020 2019
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 2件)
Scientific Reports
巻: 11 号: 1 ページ: 2741-2741
10.1038/s41598-021-82448-1
Nature
巻: 583 号: 7817 ページ: 596-602
10.1038/s41586-020-2499-y
巻: 583 号: 7817 ページ: 590-595
10.1038/s41586-020-2496-1
巻: 10 号: 1 ページ: 20896-20896
10.1038/s41598-020-77898-y
Cancer Research
巻: 79 号: 20 ページ: 5151-5158
10.1158/0008-5472.can-18-3544
FEBS Open Bio
巻: 10 号: 1 ページ: 147-157
10.1002/2211-5463.12765