研究課題
若手研究
高リスク進行期造血器腫瘍において同種移植は唯一の治療方法となることが多く、強力な抗腫瘍免疫を有すHLAが半分適合したハプロアイデンティカルドナーからの移植(ハプロ移植)は有効な治療方法となり得る。しかし再発率は依然高い。今回の研究では抗腫瘍効果を増強するためにドナーのリンパ球のみ輸注するドナーリンパ球輸注(DLI)をハプロ移植後に計画的に行うことで、移植後再発を予防する方法を確立することを目的としている。さらに再発をした場合には再発腫瘍細胞のHLAを検討することで、再発後の至適治療の選択を行っていく。これらの研究により、ハプロ移植後治療成績向上のための細胞治療の確立を本研究の最終目標とする。
進行期造血器腫瘍では、強力な抗腫瘍免疫を有すハプロアイデンティカルドナーからのHLA不適合移植(ハプロ移植)を行っても再発率が依然高いという問題がある。そこで①ハプロ移植後の地固め療法としてドナーリンパ球輸注(DLI)を行う研究と、②ハプロ移植後再発において腫瘍細胞のHLAハプロタイプの同定を行ってその後の治療方針を決定する研究とを本研究課題の中で計画していた。しかし当科でのハプロ移植は移植前処置としての保険適用をもたないアレムツズマブを使用していたため特定臨床研究法に対応する必要があったが、その対応に苦慮してしまい、ハプロ移植の施行患者数が予定よりも少なくなってしまった。①については、2020年末にアレムツズマブは適用拡大となって移植前処置に通常診療として使用できるようになったため、それに合わせて準備を進めていたプロトコールの調整が必要となった。最終的に新たに調整したプロトコールは2021年3月に自施設倫理委員会の承認も得ることができた。症例登録を開始し、DLIも施行している。ただし当初対象とした非寛解期移植患者は早期の血液学的再発が多く、地固め療法としてDLIを行えないことも多いため、血液学的非寛解だけでなく、分子生物学的ならびに細胞遺伝学的非寛解期移植患者も対象に含むプロトコールを変更し、現在も臨床研究を継続しているところである。②の研究は2019年の段階で自施設倫理委員会の承認を得て開始することができているが、前述のハプロ移植施行患者の減少で登録患者数は限定的となっている。ただしこれまでのところHLA lossが確認された再発患者は認められておらず、再発後の治療選択における有効な手段となっている。ハプロ移植はアレムツズマブの適用拡大で施行患者数が回復しており、今後も研究の対象となる患者のリクルートを継続し、学会発表や論文化につなげていく。
3: やや遅れている
本研究はハプロ移植が施行された進行期造血器腫瘍患者を対象として、研究を進めていくことが計画されている。しかし研究者自施設にて行われているハプロ移植は当時適応外使用であったアレムツズマブを移植前処置に用いる臨床研究として行われてきたものであったため、2019度からは特定臨床研究に移行することとなり、アレムツズマブを用いたハプロ移植を施行していく上での各種手続きがかなり煩雑となってしまった。そのため、これまで年間10人近く行われていたハプロ移植症例がしばらく減少してしまい、結果的に本研究計画の対象となる患者が少なく、研究を具体的に進めるうえでの遅れが出てしまった。現在アレムツズマブの適用拡大が承認され、移植前処置での使用が保険診療として行えるようになった。これに伴ってハプロ移植の特定臨床研究の各種調整、計画中であった移植後地固め療法としてのドナーリンパ球輸注の臨床研究プロトコールを再度見直す必要が生じ、研究の進行がさらに遅れてしまった。しかしその調整ができてからは保険診療として行えるようになった分、症例数が回復してきている。
進行期造血器腫瘍患者に対するハプロ移植の前処置に用いているアレムツズマブが保険診療として使用できるようになり、ハプロ移植の実施件数は増加傾向にある。ハプロ移植後の地固め療法としてドナーリンパ球輸注(DLI)を行う研究、ハプロ移植後再発において腫瘍細胞のHLAハプロタイプの同定を行ってその後の治療方針を決定する研究ともに自施設の倫理委員会で承認を得て開始されており、今後、適格症例に対する研究へのリクルートをより積極的に行い、研究の遂行をペースアップしていくことで研究結果の解析へと進めていく。なおDLIの臨床研究については、当初の予定より適応患者の範囲を拡げてその有効性を確認していくようにプロトコール改定を行った。これにより、研究に登録できる患者数が増え、研究がさらに進めやすくなると考えている。さらにはどちらの研究も、より多くの施設の参加する多施設研究に移行していくことも考慮して、多施設用のプロトコールについても検討していく。
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