研究課題
若手研究
特発性肺炎症候群(IPS)は同種造血幹細胞移植後の致死的合併症であるが発症機序は明らかでない。免疫抑制剤等の治療は効果が乏しく、同種免疫反応以外の機序を標的とした発症予測、予防法の確立が急務である。我々はIPS患者の一塩基多型を解析し、アンジオテンシノゲンの遺伝子多型とIPS発症の相関を見出した。特発性肺線維症(IPF)との類似点に着目し、HMGB1-RAGE系とレニン・アンジオテンシン系の関係を検証するマウスモデルでの実験を計画した。この機序が明らかとなればIPSのブレイクスルーとなる予防法が確立でき移植医療の安全性が向上すると考える。
野生型マウスへの移植後肺にCD3陽性T細胞の浸潤を認めた。肺でのアンジオテンシノゲンの発現はコントロールよりも低下していた。アンジオテンシノゲンの血中濃度が低下する肝臓特異的アンジオテンシノゲンノックアウトマウスへの移植後2週間の時点で、ノックアウトマウスで肺機能検査や炎症性サイトカインの発現が増悪しており、ノックアウトマウスで生存率が低下していた。野生型およびノックアウトマウスいずれも肺胞マクロファージでのアンジオテンシノゲンの産生が移植後で亢進していた。肝臓特異的アンジオテンシノゲンノックアウトマウスに対する移植後肺で、HMGB1-RAGE系の発現を野生型と比較した結果は同等であった。
血圧調節に関わるアンジオテンシノゲンによる様々な病態増悪機序が知られているが、本研究では血中のアンジオテンシノゲンが低い肝臓特異的アンジオテンシノゲンノックアウトマウスで、肺でのアンジオテンシノゲンの発現が逆に亢進し、移植後肺障害やブレオマイシン肺障害が増悪していた。このことは、各臓器でのアンジオテンシノゲンの発現量やその臓器障害は血中のアンジオテンシノゲン濃度測定では予測できない事を示している。
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Clinical lymphoma myeloma & leukemia
巻: 21 (4) 号: 4 ページ: 321-327
10.1016/j.clml.2020.10.004