研究課題
若手研究
寒冷刺激に応じて白色脂肪組織に出現する誘導型褐色脂肪細胞はミトコンドリアにおけるUcp1の作用を介して熱を産生しエネルギーを消費する特徴を有するため肥満症、肥満2型糖尿病の治療標的として期待される。しかしヒト褐色脂肪細胞の活性には個人差が大きくマウス近交系にも同様の現象が知られており、ゲノム多型の重要性が想定される。本研究では褐色化能の低いC57BL/6Jマウス、褐色化能の高い129X1/SvJマウスおよびこれらを交配させたF1を用いて、特にF1細胞におけるRNA-seqやChIP-seqにおいてアレル特異的な解析を行い、ゲノム多型が白色脂肪組織の褐色化能を規定するメカニズムを明らかにする。
褐色脂肪細胞はミトコンドリアにおけるUcp1の機能を介して熱を産生しエネルギーを消費する機能を有し、その数や働きを高めることは「エネルギー消費の促進」に基づく生活習慣病の新しい治療法につながり得る。ヒト褐色脂肪細胞の活性には個人差が大きく、マウス近交系においても系統間の差が大きいためゲノム多型の影響が想定される。我々は太りやすく褐色脂肪細胞活性の低いC57BL/6Jマウス、太りにくく褐色脂肪細胞活性の高い129X1/SvJマウスおよびこれらを交配させたF1をモデルに網羅的クロマチン構造解析を行い、ゲノム多型がゲノム-エピゲノム連関を介してUcp1の発現を規定するメカニズムを同定し報告した。
現存する肥満症の薬物治療および外科治療は「エネルギー摂取の抑制」という考え方に基づいている。腸管や中枢神経系に作用して脂肪の吸収を阻害したり食欲を抑制したりする薬剤は現存するが、副作用等の懸念から実臨床では十分には活用されていない。高度肥満症例に対する外科手術の有効性は確立されつつあるが、適応が限られることは明らかである。本研究を発展させることによりゲノム多型がヒト褐色脂肪細胞の活性を制御するメカニズムが解明され、更にそのようなゲノム多型が褐色脂肪細胞の機能を介して臨床転帰に与える影響が明らかになれば、「エネルギー消費の促進」に基づく肥満症の精密医療に結実することが期待される。
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