研究課題
若手研究
HER2陽性乳癌は乳癌全体の約20%を占め、高い増殖能と転移能を有し予後不良である。HER2の機能を阻害する抗HER2医薬品はHER2陽性乳癌に著効するが耐性化が臨床上重大な問題となっている。そこで、本研究ではHER2陽性乳癌細胞の細胞膜形態制御機構を標的としたHER2陽性乳癌に対する新規分子標的薬のシーズ化合物の導出を狙う。具体的には申請者が最近発見したHER2陽性乳癌細胞の細胞膜形態制御機構に必須なユビキチンE3複合体の形成阻害剤をアルファスクリーンシステムにより探索する。同時に当該タンパク質複合体のヒトHER2陽性乳癌組織における発現と予後との相関を解析し、臨床的重要性を導出する。
EGF受容体family分子であるHER2を高発現するHER2陽性乳癌は乳癌の約15%を占める悪性度の高い乳癌である。本研究では申請者の研究チームが独自に見出したHER2陽性乳癌細胞の細胞増殖を正に制御するCUL3/KCTD10/RhoBユビキチンリガーゼ複合体に注目し、その細胞増殖制御機構の解明と、当該分子基盤に対する制御剤の探索を行った。その結果、HER2陽性乳癌細胞の細胞膜形態変化と細胞増殖に必須なRhoB結合タンパク質の同定に成功した。更に、アルファスクリーンを用いて、CUL3とKCTD10の結合を阻害する化合物を複数同定することに成功した。
現行のHER2陽性乳癌に対する治療薬は、薬剤耐性の問題から、投与期間は限定的である。本研究ではHER2以外の分子基盤を創薬標的としているので、本研究を通して導出されたシーズ化合物は、抗HER2療法と併用して使用可能な新たなHER2陽性乳癌治療薬として、今後の開発が期待される。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Life Science Alliance
巻: 4 号: 9 ページ: e202101095-e202101095
10.26508/lsa.202101095