研究課題/領域番号 |
19K18067
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分55010:外科学一般および小児外科学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 (2022) 大阪市立大学 (2019-2021) |
研究代表者 |
高田 晃次 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 病院講師 (00838261)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 乳癌 / 腫瘍微小環境 / 腫瘍免疫応答 / 再発乳癌 / 腫瘍不均一性 / バイオロジー変化 |
研究開始時の研究の概要 |
腫瘍組織は癌細胞と間質細胞は相互作用により,腫瘍微小環境 (TME) と称される環境を形成している.乳癌治療においてTMEは,予後や治療効果を予測する上で重要な役割を担っている.一方で転移・再発乳癌においては,癌細胞の評価が原発巣とは異なるバイオロジーに変化する可能性が示唆されている.この変化により再発乳癌の治療方針が決定されるため,再発巣からのre-biopsyの重要性が提唱されている.申請者は,これまで再発乳癌における免疫微小環境 (iTME) の悪化が予後に影響を及ぼすことを明らかにしてきた.本研究では再発乳癌におけるTME変化を検証し,その変化に関わる因子や不均一性を明らかにする.
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研究実績の概要 |
腫瘍組織は,癌細胞とその周囲に存在する線維芽細胞や血管構成細胞,免疫細胞などの間質細胞から構成され,腫瘍微小環境 (tumor microenvironment, TME) と称される特徴的な環境を形成している.癌は自身の腫瘍細胞のみならず,周囲の間質細胞,血管などの微小環境と互いに影響を及ぼしながら自己の生存をより有利にしていく.乳癌治療においてTMEは,予後や治療効果を予測する上で重要な役割を担っていることが明らかになってきている. 一方で転移・再発乳癌においては,癌細胞の評価が原発巣とは異なるバイオロジーに変化する可能性が示唆されている.このサブタイプの変化により再発乳癌の治療方針が決定されるため,再発巣からのre-biopsyの重要性が提唱されている.しかしながらこれらの概念は,癌細胞 におけるbiological marker発現 (ER, PgR, HER2, Ki67) の変化のみが注視されており,TMEのダイナミックな変化を評価するものではない. 申請者は,再発に 関わる悪性形質の獲得にはTMEの関与が大きいと考えている.これまで再発乳癌における免疫微小環境 (tumor immune-microenvironment, TIME) 変化を腫瘍浸潤 リンパ球 (tumor-infiltrating lymphocytes, TILs) にて評価し,TIMEの悪化が予後に影響を及ぼすことを明らかにしてきた. さらに臨床的因子とTME変化の相関を検証し,その変化に関わる因子や不均一性の解明を目指している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画に従って、乳癌再発に関わる腫瘍免疫や喫煙などとの関連を検索した.TMEの悪性変化に関わる臨床的因子の探究: 申請者はTMEの悪性変化に関わる臨床的因子を検索しており,QOLの関する指標が免疫活性に寄与し 予後に与える影響や,喫煙やカルシウム拮抗剤,スタチンがTIMEへ与える影響について議論した前研究を報告している.本研究ではこれらの臨床因子が再発時のTMEに与える影響も検証し,“breast cancer subtype discordance” との関連を明らかにしていく. 再発乳癌では、喫煙は腫瘍免疫を介してbiological markerの変化を来すことを明らかにした (J Transl Med 18:153, 2020).また全身性炎症マーカーである血 小板・リンパ球比 (PLR) がセンチネルリンパ節生検における予測因子となることも報告を行った (Anticancer Res 40:2343-2349, 2020).また2021年には,肥満指数 (BMI) と免疫応答の関連についても検証を行った (BMC Cancer 21:1129. 2021).さらにホルモン受容体陽性乳癌における腫瘍免疫の動向についても明らかにした (BMC Women's Health 21:225, 2021). 本研究では、腫瘍免疫を介した乳癌の悪性転換について,交絡する因子を探究している.研究成果については定期的な発表を行っているものの, 系統だった小括までには至らず,全体としてはやや遅れているものと思われる.
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今後の研究の推進方策 |
近年,腫瘍組織の特徴的な環境を標的とした免疫療法・分子標的薬が,種々の癌腫に対し臨床使用されるようになり,臓器横断的治療が実用化されている. 一方,再発乳癌における悪性形質や化学療法抵抗性の獲得が,再発乳癌治療戦略における課題となっている.癌細胞自体のバイオロジーの変化ももちろんだが,再発巣でのTMEも関与しており,その把握・解明の重要性が提唱されている.申請者は,これまでに再発乳癌における免疫微小環境 (TIME) の変化を評価し,TIMEの悪化が予後に影響を及ぼすことを明らかにしている.さらにTIMEを考慮した再発乳癌の新たな治療戦略の構築にも取り組んでいる.TIMEへの影響を与える因子として,癌細胞自体のバイオロジー変化のみならず,外的調整因子の影響も注目されている.申請者は,これまでにTIMEに影響を与える様々な外的調整因子を報告している. 本研究のテーマである「乳癌治療における腫瘍微小環境への外的調整因子の探究」では,外的調整因子を考慮したうえでTIMEの改善を目指すことで,再発乳癌における新たな治療戦略の構築の一助としたい.
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