研究課題
若手研究
線維芽細胞、細胞外マトリックスから構成される癌微小環境は癌間質相互作用により癌細胞の悪性化、薬剤治療抵抗性に重要な役割を果たしている。我々は膵癌微小環境の中心的存在である膵星細胞の活性化にオートファジーが関与していることを初めて解明した。今回我々はこのオートファジーの活性化に老化・ストレス耐性及び代謝を司るsirtuinが関与しているとの仮説を立てた。この機序の解明により、sirtuinを介した星細胞活性の制御が可能となり、標的分子をターゲットとした新規治療開発へと応用することで、癌組織への薬剤到達性の改善や、浸潤、転移の抑制が可能と考える。
当初我々はオートファジーの活性化に老化・ストレス耐性及び代謝を司るsirtuinが関与しているとの仮説を考えた。しかし、膵星細胞のオートファジー活性化に関与する遺伝子群をマイクロアレイで網羅的に探索したところ、小胞体関連遺伝子がよりオートファジー活性に関わっていると考えられたため、これらの遺伝子を対象に、オートファジーを介して癌間質相互作用に関わる影響を検証した。その結果、小胞体関連遺伝子をノックダウンした際に、有意にオートファジーの抑制を介して膵星細胞の活性化を抑制することを発見した。小胞体関連遺伝子が膵癌において、癌間質相互作用を標的とした治療の新たなターゲットとなる可能性が示唆された。
膵癌の微小環境において中心的な役割を果たしている膵星細胞は、その活性化を抑制し休眠状態(Quiescent 状態)へと誘導することが膵癌細胞の悪性化を抑制すると考えられているが、これまでに、膵星細胞をQuiescent 状態にする有効な方法は見つかっていない。本研究では、オートファジーにおける隔離膜形成の起源でもある小胞体に関連する遺伝子群が、オートファジーを介して膵星細胞の活性化に関与していることを明らかにした。小胞体関連遺伝子が膵癌において、癌間質相互作用を標的とした治療の新たなターゲットとなる可能性が示唆され、停滞を続ける膵癌治療において新たなブレイクスルーとなると期待される。
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