研究課題
若手研究
研究代表者は神経障害性モデルマウスに抗炎症性M2ミクログリア誘導因子を投与することで、組織破壊的な炎症反応を抗炎症・組織再生型に転換し疼痛制御を促進することを見出した。また誘導されたM2ミクログリアの放出する細胞小胞体(エクソソーム)が周囲のSchwann細胞に取り込まれ炎症状態の制御や細胞死の抑制を行うことで疼痛制御を行っていた。本研究は、ミクログリア由来エクソソームに含まれる複数のmiRNAから疼痛制御に関与する共通標的遺伝子を同定する。またM2ミクログリア由来エクソソームの投与が、同定された遺伝子へどのように影響を及ぼすか検証する。
神経因性疼痛では、体性感覚系の損傷や疾患により、しばしば慢性疼痛が引き起こされる。現在、神経因性疼痛の決定的な治療薬となる薬剤は存在しない。研究代表者は、マウス坐骨神経部分結紮モデルを用いて、ヒト剥離乳歯由来幹細胞由来の培養上清(CM)の治療可能性を検討した。行動試験では、CMの静脈内投与はPSLによる知覚過敏を大きく改善した。CMを投与すると、損傷した坐骨神経と同側のL4/L5後根神経節にM2マクロファージが動員され、脊髄ではミクログリアの活性化が抑制されることがわかった。また、M2-CMはシュワン細胞における侵害受容体および炎症性メディエーターの発現を直接抑制することを見出した。
神経障害性疼痛などの慢性疼痛は発症機序が不明な点から、根本的な治療法の確立には未だ至っていない。近年、神経組織の炎症が慢性疼痛の維持と悪化と関連すると報告がある。本研究は、PSL後に末梢から脊髄で活性化したマクロファージ/ミクログリアをM2へ誘導することで、マウスの疼痛過敏状態を改善することを見出した。さらにM2から分泌される疼痛制御因子群を明らかにできた。これらの知見は、神経障害性疼痛だけなく、多くの慢性疼痛へ対する新たな製剤化および創薬への途を開いた。以上の方法は、慢性疼痛の原因となる神経炎症と免疫細胞をターゲットにしているため、既存薬とに比べ有効であると考える。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 2件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 1件)
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