研究実績の概要 |
採血時の駆血や離握手の負荷により、静脈血液ガス測定の結果、特に乳酸値が変化しうるかを検討した。40名の成人ボランティアを対象として、前腕皮静脈に22G留置針を留置し固定した。上腕部を60mmHgで駆血し、駆血後0(駆血前コントロール対象),2,5,10分で留置ルートから採血し血液ガス測定を行った。結果は、各駆血時間においてPH ,PCO2,乳酸値に優位な上昇は認めなかった。特に注目すべきことに駆血後10分でもPH,PCO2,乳酸値に変化がなかった。 また、離握手の負荷による影響を検討するために、10分駆血・採血終了後に駆血を解除し、2分後に再駆血。今度は2分間の離握手を行った後血液ガス測定を行うと、こちらは統計学的には有意差は認めなかったが乳酸値の上昇を認める例も散見された。 本研究結果により、日常的に行う上腕駆血では静脈血液ガスや乳酸値には影響しないことが判明した。つまり、静脈路確保時に、静脈路確保に難渋し駆血が5分以上続くような場合でも、静脈血ガスの値は信頼できる値であると考えて良い。しかしながら同様に静脈の可視化を容易にするために日常的に行う駆血後の離握手運動については、値に影響しないと結論づけることはできなかった。ただし、日常の臨床現場において、「静脈路確保のために2分間離握手し続ける」ことはあり得ないため、ほぼ影響しないだろうと考えている。 また関連する疾患の症例報告を行い、論文化することができた。
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