研究課題/領域番号 |
19K18361
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分55060:救急医学関連
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
小川 史洋 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (80383610)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ARDS / 喫煙 / LPS / CSE / 血管障害 / グリコカリックス / シンデカン-1 / Cigarette Smoke / SIRS / CXADR / Prostaglandin / inflammation |
研究開始時の研究の概要 |
全身炎症性反応症候群(SIRS)から発生し、高度の呼吸障害・死亡の転機をたどる急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome、ARDS)、急性肺損傷(acute lung injury、 ALI)は、救急・集中治療領域で遭遇する未だ治療法の確立されていないおらず、本研究に置いて、ヒト臨床検体およびARDS/ALIモデルでの病態の解明と炎症性脂質メディエー ターであるProstaglandinとの関連や喫煙がARDS/ALIの病態に及ぼす影響を解明し、疾患の予後改善および未だ開発されていない同疾患に対する革命的な治療法を解明する。
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研究実績の概要 |
救急領域・集中治療領域において全身炎症症候群(SIRS)によって生じる肺胞領域の非特異的炎症による透過性亢進型肺水腫を病態とする急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を経験することは多い。世界中で猛威を奮っている新型コロナウイルス感染症に関してもARDSの病態を呈している。しかし、ARDSの概念が提唱されているにも関わらず、確固たる根本的治療法が確立されておらず、対症療法を行なっているのが現状であり、その治療法の確立が急がれるところである。 現在考えられているARDSの病態については、SIRSによりインターロイキン(IL)-6、IL-8、IL-10およびTNF-1を中心とした炎症性サイトカインの増加を介し、肺血管透過性亢進および肺胞障害に至ることでARDSが成立するという仮説が考えられている。コクサッキーアデノウイルス受容体(Coxsackievirus and Adenovirus Receptor, CXADR)は、心筋炎において血管壁における自然免疫経路や細胞表面相互因子(tight junction)、JAML signaling downstreamと関連し、炎症性疾患との関連が指摘されており、未だに解明されていないARDSの血管内皮障害および血管内皮障害による血管透過性や細胞間結合の関連性を今回の研究でin vivo, in vitroで追求・解明し、さらに今後臨床検体(気管支洗浄液や血液検体など)で整合性を評価し、ヒト臨床でも同様の結果が得られるのか、その鍵となる因子・シグナルを同定・解析することでARDSの革新的根本的治療法の確立を目標とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
in vivo 滲出期ARDS modelにおけるLPS気道内単独投与48時間後の肺の病理学的評価およびWestern blotにて炎症性因子の解析を行った。PBS群には炎症細胞浸潤や間質の炎症性変化や壁肥厚、肺胞内の浸出液貯留などは認められなかったが、LPS群では滲出期ARDSに相当する所見が認められた。Western blotによるCXADRおよび肺胞破壊マーカーでのARDSの評価においてもPBSと比較し、LPS群でCXADRを含め各種マーカーの発現増加を認めた。以上よりLPS誘発ARDSにはCXADRが関与していることがわかった。また、in vivo 滲出期ARDS modelにおけるLPS気道内単独投与における脾臓および骨髄の免疫細胞のCXADR発現をWestern blotで検討した結果、肺組織同様、脾臓・骨髄においてもPBS群と比較し、LPS誘発ARDS群でCXARD発現増加を認めた。以上より局所組織のCXADR発現増加だけでなく、全身免疫細胞において発現が増加していることがわかった。 in vivoにおけるosmotic pumpを用いたCigarette Smoke Extract(CSE)によるsmoking model(CSE群)において、投与4週間・6週間後の肺の病理学的評価をしたところ、vehicle群と比較し、CSE群の肺実質の破壊像及び炎症性変化とCXADR発現の増加を確認できた。さらに、走査型電子顕微鏡で血管内皮のGlycocalyxを観察したところ、CSE modelではGlycocalyxが剥離しており、喫煙による慢性炎症により血管透過性亢進し、ARDS増悪につながる可能性が示唆された。 現在CXADR flowマウスを用いたCXADR KOマウス作成中であり、このマウス作成がなかなかうまくいかず、やや研究状況が遅れているところである。
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今後の研究の推進方策 |
in vivoにおけるCSEを用いた喫煙マウスモデルにおいて、血管内Glycocalyxが実際にどの程度剥離しており、Glycocalyx補充もしくは剥離保護薬投与によりGlycocalyxが保たれ、血管透過性の程度を電子顕微鏡を用いて確認する。さらに、親の喫煙による胎盤・胎児の血管内皮細胞を電子顕微鏡で確認し、血管透過性を確認する。 この喫煙モデルにLPSもしくは、ICPを用いたARDSを発生させることで、その死亡率や肺障害の程度を確認する。これにCXADRが関わっていることがある程度わかっている為、作成したCXADR flow/Cre ER交配マウスにタモキシフェンを投与することで、KOを作成し、同様のモデルを用いて解析を行う予定である。 in vitroにおいては、気道上皮基底細胞にsiRNAを用いてCXADRをKOし、喫煙モデル・通常肺モデルを用いてLPSで誘導したARDSモデルを解析する予定である。
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