研究課題
若手研究
グリオーマは周囲脳組織にびまん性神経浸潤を起こすため全摘出が難しく根治が難しい。このためびまん性神経浸潤のメカニズムについては長らく研究者の興味の対象であったが、適切な腫瘍モデルがなく、手術検体など不均質な研究材料しか使用できないことから研究が進展してこなかった。これに対し我々は、これまでの研究でグリオーマのびまん性神経周囲浸潤を再現するマウスモデルの作成に成功した。そこで本研究ではこの新しいモデルを用い、びまん性神経周囲浸潤にかかわる遺伝子を同定する。加えて当該遺伝子産物の機能を阻害し、びまん性神経周囲浸潤を抑制する手法を開発する。
ヒストンH3K27M変異をマウスグリア細胞へ遺伝子導入し確立したマウスH3K27M変異導入グリア細胞(IG27細胞)をマウス脳へ移植し、神経周囲浸潤を伴うびまん性グリオーマモデルの作成に成功した。網羅的遺伝子解析で、IG27細胞は野生型細胞と比較してグルコーストランスポーター1(Glut1)の上昇を認めた。Glut1ノックダウンIG27細胞をマウス脳に移植した結果、通常IG27細胞と比較し、生着腫瘍細胞数が有意に減少し、グリオーマの神経周囲浸潤の頻度が有意に減少した。さらにGlut1発現過剰野生型細胞で神経周囲浸潤の再現を認めた。これによりGlut1が神経周囲浸潤を制御していることが示された。
グリオーマのびまん性浸潤は外科的根治術を不可能にしている最大の原因である。びまん性浸潤の中でも神経周囲浸潤に対する有効な治療は現時点ではない。我々が樹立したびまん性グリオーマモデルは、遺伝子異常に基づき、かつ病理組織学的特徴を再現したモデルである。本研究により、Glut1が神経周囲浸潤に関与していることが示され、Glut1阻害薬がグリオーマの神経周囲浸潤に対する治療となりうる可能性を示した。
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Neurooncol Adv.
巻: 30 号: 1 ページ: 06198-06198
10.1093/noajnl/vdaa150
https://www.amed.go.jp/news/seika/kenkyu/20201201.html
http://www.med.gifu-u.ac.jp/neurosurgery/