研究課題/領域番号 |
19K18400
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56010:脳神経外科学関連
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
佐藤 信 自治医科大学, 医学部, 助教 (80742345)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | ニューロナビゲーション / 拡張現実 / モーションキャプチャー / 脳神経外科 / 手術用顕微鏡 / 脳神経外科学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、拡張現実技術を用いた脳神経外科手術支援システムの開発である。拡張現実は、スマートフォン等を通じて日常生活にも広く普及し、情報をわかりやすく表示する表現技術として注目されている。本研究はこの技術を脳神経外科の手術に導入し、新しい手術支援システムを構築する事を目指している。すでにタブレットを用いた拡張現実手術支援システムが完成しているが、この研究では、脳神経外科手術で重要なステージである顕微鏡を用いた手術に対しても有効に支援できるよう、顕微鏡を用いた拡張現実手術支援システムの開発を行う。本開発により脳神経外科手術の多くの段階に対応できる拡張現実手術支援システムの構築が実現する。
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研究実績の概要 |
この研究は、肉眼によりなされる手術手技(以下マクロ手技)および顕微鏡によってなされる手術手技(以下鏡視下手技)の両方に同時適用可能な拡張現実(AR)ニューロナビゲーションシステムの開発を目指すものである。具体的にはタブレット端末、ないしは手術用顕微鏡を用いて術野を観察すると、タブレットないし手術用顕微鏡で捉えた術野画像に脳腫瘍や血管等の術者に必要な解剖情報の3次元ヴァーチャル画像がリアルタイム重畳して表示されるシステムである。 本研究が実現することにより、解剖が複雑でオリエンテーションの獲得が困難な脳神経外科手術における解剖を、AR技術を用いることで術者や助手だけでなくメディカルスタッフも含めてわかりやすく理解することができ、手術の成績改善が期待される。 本研究はこれまでにプロトタイプシステムの完成に至っている。このシステムはARプログラムを搭載したメインコンピュータと接続ケーブルでつながれたタブレット端末、および手術用顕微鏡から構成される。接続ケーブルを通じてタブレットおよび手術用顕微鏡により撮影された術野動画は制御コンピュータのARプログラムに転送され、ARプログラムはあらかじめ登録された解剖学的構造物の3次元ヴァーチャル画像をリアルタイムに術野動画に重畳してメインコンピュータのモニターおよびタブレット端末に表示する。 本システムが既存の類似システムに対して優れる点の一つ目は、タブレットと手術用顕微鏡両方でARを提供することで、マクロ手技から鏡視下手技に至るまで脳神経外科手術の多くの過程を支援することが出来る点である。二つ目は、本システムは旧式のものを含めたあらゆる顕微鏡に対して後付けで設置可能であり、特定の顕微鏡にしか適合しない既存システムに対して設備投資が抑えられる点である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現状の進捗状況について上記の様に判断している。 判断の根拠としてはすでにハードウェア、ソフトウェア面を含め実用水準のシステムが完成しており、臨床においてもその有用性評価を開始している。 開発されたシステムは当初の目論見通り、タブレットと手術用顕微鏡の両方にAR情報を提供することで、開頭を含むマクロ手技から顕微鏡による鏡視下手技に至る脳神経外科手術の多くの過程をシームレスに支援できることが臨床においても確認された。 また、デジタルに対応しない非常に旧式の顕微鏡にも問題なく適合することも確認できており、あらゆる顕微鏡に対応可能として、導入コストを低減できるシステムという当初の目標も達成された。 また当課題開始後から現在に至るまでに、本研究に関連した3本の査読付き英語論文と1本の査読付き和文論文、国際学会を含む多数の学会発表により社会への成果公表も行えているため、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までにシステムが完成し本年は以下の二点を重点的に進める。 ①システムのブラッシュアップ 臨床応用においてシステムの実現可能性や有用性を確認することが出来たが、真に実用的なシステムに発展させるためにはシステムのさらなる臨床における評価とそのフィードバックによる追加開発が必要である。具体的には光学マーカーを含む器具が実用に耐える形状や強度を持つか、手術室における最適な位置計測カメラの設定や機器配置の探索などであり、本年はこの点を重点的に進める。 ②成果の社会への公表 本研究を通して得た知見は複数の論文および学会発表によって社会に公表しているが、本年も引き続き研究成果の報告を通じて社会への成果還元を進めていきたい。
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