研究課題
若手研究
骨粗鬆症は健康寿命の主要なボトルネックであると同時に、長期的には死亡リスクをも上昇させる恐ろしい疾患である。Sfrp5は脂肪細胞のみによって分泌され、Wntシグナルのアンタゴニストとして働く。代表者はSfrp5欠損マウスの骨組織を解析し、骨量が減少することを発見した。このとき骨吸収を司る破骨細胞は増加し、骨形成を担う骨芽細胞が減少していた。本課題では以下の3つを明らかにすることを目的として遂行する。①Sfrp5はどのような機序で骨形成を促進するのか。②脂肪細胞のSfrp5発現がどのように制御されているのか。③Sfrp5の投与または脂肪組織のSfrp5発現を増加させることで骨粗鬆症治療が可能か。
WntアンタゴニストであるSecreted frizzled-related protein 5(Sfrp5)が骨芽細胞の分化を促進することを発見した。本課題では、その機序を解明し、骨粗鬆症治療に応用するための基盤を築くことを目的とした。Sfrp5を添加した初代培養骨芽細胞でRNAシーケンス解析を実施し、Sfrp5によって変動するシグナル経路Aを同定し、シグナル経路Aの阻害薬によってSfrp5の作用が解消されることを確かめた。さらに、共免疫沈降法でSfrp5と相互作用する候補蛋白質を同定した。本課題によって、「Wntアンタゴニストが骨形成を促進する」という全く新しい機序の一部が明らかになった。
骨は新たに作られること(骨形成)と破壊されること(骨吸収)のバランスで維持される。このバランスの乱れは、骨粗鬆症に結び付く。現在、日本には1280万人の骨粗鬆症患者がいると推定されており、健康寿命の主要なボトルネックの一つである。そのため、骨粗鬆症に対するより良い治療法の開発は喫緊の課題である。Wntシグナルは、骨形成を促進するシグナルとして知られている。一方、申請者が着目するSfrp5はWntアンタゴニストであるにもかかわらず、骨形成を促進する。これは、今までの既成概念を覆す発見であり、この機序を明らかにした本課題の成果は、骨粗鬆症に対する新たな治療標的の発見に発展することが期待される。
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