研究課題
若手研究
口腔癌に対する切除治療法は患者のQOLを低下させるため、低侵襲な新たな治療法の確立が期待される。機械刺激により活性化されるイオンチャネルであるPiezo1は細胞外環境の機械刺激や間質の硬さに応答し、器官形成や細胞移動への関与が報告されている。また近年、癌を取り巻く微小環境を構成する成分のみならず、癌微小環境の物理的な変化により癌形成及び進展が亢進されることが注目されている。しかし、癌における詳細な分子機構は、Piezo1の関与を含め不明である。そこで本研究では、間質の硬さの変化をPiezo1が感知し、活性化された結果、癌の進展に関与するかを明らかにし、新規の口腔癌治療法の開発を目指す。
本研究では、口腔扁平上皮癌(OSCC)におけるHippo pathwayと機械感受性イオンチャネルPIEZO1の相互作用およびPIEZO1の腫瘍形成における機能について検討した。浮遊培養法にて、ヒトOSCC細胞株におけるPIEZO1の発現がYAPシグナルに制御されることを見出した。また、PIEZO1ノックダウンはPIEZO1アゴニスト依存的な細胞内カルシウムイオンの流入、ERKのリン酸化およびOSCC細胞株の細胞増殖を抑制した。OSCC病理組織標本において腫瘍部でYAPは高頻度に核に局在し、PIEZO1およびKi-67と共局在した。
OSCCでは、他の癌腫において治療標的となる遺伝子異常が少ないことが報告されている。そのため、治療標的となる異常に活性化した細胞内シグナル伝達の同定はOSCCの新規の治療法の開発に繋がることが期待される。本研究はYAPシグナルがOSCCにおいて異常に活性化し、PIEZO1の発現を介して、OSCCの細胞増殖を制御することを明らかにした。本研究の成果はCaイオンチャネルを介した異常なシグナル伝達の活性化は口腔扁平上皮癌の新たな治療標的となりうる可能性を示した。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
The Journal of Pathology
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