研究課題/領域番号 |
19K19004
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分57030:保存治療系歯学関連
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
門 貴司 北海道医療大学, 歯学部, 准教授 (20632540)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | インプラント周囲炎 / 除染法 / アルカリ電解水 / アルカリ電解次亜水 / FGF-2 |
研究開始時の研究の概要 |
インプラント表面に有機物が付着していると骨形成が抑制されることが報告されている。申請者らは、インプラント周囲炎に罹患したチタン表面に対する既存の除染の方法では、殺菌は出来るが細胞の足場となる細胞外マトリックスの付着を阻害する有機物が残存し、除染としては不十分であることを見出した。そこで、本研究では有機物分解作用を持っているOCl-とOH-を含むアルカリ性の電解次亜水を用いて、インプラント周囲炎によって汚染されたチタン表面を除染し、FGF-2(塩基性線維芽細胞増殖因子)を用いて骨形成を促進することで再オッセオインテグレーションの手法を確立する基礎的研究を行うことを目的とする。
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研究実績の概要 |
インプラント周囲炎に罹患したチタン表面の除染法は確立されていない。これまで本研究では、人工プラークによって汚染された、機械研磨されたチタン表面や粗造化されたチタン表面に対する除染を行ってきた。除染の手法として、一般的に行われているエアーアブレーシブに過酸化水素処理(H2O2処理)や生理食塩水処理(NaCl処理)を加えることに比較して、エアーアブレーシブにアルカリ電解次亜水処理(AEW処理)を加えることで、ヒト骨髄間葉系幹細胞およびマウス頭蓋冠由来骨芽細胞様(MC3T3-E1)細胞に対する細胞親和性が向上し、新鮮なチタン表面と同等になることを明らかにした。 当該年度は、除染手法としてAEW処理を行うことにより、細胞親和性が向上したチタン表面が、MC3T3-E1細胞の骨分化能に与える影響と、生物学的成長因子がその骨分化能に与える付加的作用について検討を行った。 結果は、AEW処理を行ったチタン表面は、新鮮なチタン表面と同等の骨分化能を示したが、NaCl処理では、新鮮なチタン表面と比較して骨分化能は減少していた。この結果から、現在一般的に行われているNaCl処理で行う除染では、骨分化能を十分回復できない可能性が示されたとともに、インプラント周囲炎の治療において、汚染されたチタン表面に対する除染の重要性が示された。 さらに、本研究では生物学的成長因子として、歯周組織再生材料として用いられているエナメルマトリックスタンパク質とFGF-2の除染への併用を検討した。しかしながら、新鮮なチタン表面および除染の手法としてAEW処理を行ったチタン表面において、生物学的成長因子が付加的な骨分化能を向上させる効果は認められなかった。この結果から、インプラント周囲炎に対する治療おいて、生物学的成長因子の付加的な効果よりも、チタン表面の除染手法が重要である可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究初期のころは、コロナ対応の学部マネージメント業務および遠隔講義システムの構築・管理・維持業務の責任者となってしまったため、そちらに対するエフォートが大きなってしまい、全体的な研究の進行状況が遅れてしまっていた。 今年度は当初の予想に反して、生物学的成長因子の付加的効果が得られず、得られないことが間違いないことかを確認するために時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ対応で思った通り研究を進めることができてこなかったため、動物実験の実施を検討していたが、実施が難しくなってきている。ただし、今年度、除染後のチタン表面におけるエナメルマトリックスタンパクとFGF-2がマウス頭蓋冠由来骨芽細胞様細胞の骨分化に与える影響について、重要な知見が得られた。これらの生物学的成長因子をインプラント周囲炎の治療に用いることは、臨床論文で様々な報告が出ている。しかしながら、今年度の結果から、生物学的成長因子が付加的な骨分化能を向上させる効果は認められず、インプラント周囲炎に対する治療としては、確実な除染法の確立が重要であることを示唆するものであった。 来年度は、今回の結果は非常にインパクトのある内容であるため、これらのデータの再現性と原理について考察できるデータを集積し、最後にしっかりとデータをまとめて公表できるようにする。
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