研究課題/領域番号 |
19K19033
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分57030:保存治療系歯学関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
勝俣 環 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 助教 (70812288)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2020年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2019年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | S. mutans / SortaseA / Sortase / Streptococcus mutans / 菌体表層タンパク / Streptococcus mutans |
研究開始時の研究の概要 |
Streptococcus mutansはう蝕原性細菌であり、歯科保存学領域では非常に重要な研究対象である。申請者は、S. mutansの菌体表層タンパク質の局在に関与する酵素であるSortaseの欠損変異株を作製し、野生株と比較した結果、付着能力、凝集能力が共に著しく減少することを確認した。このことは、菌の定着能力が低下したことを示し、ひいては病原性の減少を意味する。本研究では、S. mutansのSortaseによって菌体表層へ局在化する6種類のタンパクの内、歯科材料表面の定着に関与するタンパクを同定、それを利用することにより、う蝕抑制効果の高い新規歯科材料の開発を目的とする。
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研究実績の概要 |
Streptococcus mutansはう蝕原性細菌であり、菌体表層タンパク質の局在に関与する酵素としてSortaseを保有している。本研究では、Sortase依存的に菌体表層へ局在化する6種類のタンパク(WapA, FruA, SpaP, WapE, GbpC, DexA)の網羅的解析を行い、歯科材料表面の定着に関与するタンパクを同定し、う蝕予防に利用することを目的とする。 Sortase遺伝子、その他表層タンパク6種の計7種類について遺伝子欠損株を作製し、性状解析を進めている。前年度までに行った初期付着能の検証、唾液凝集能の検証ではSortase関連遺伝子欠損株と野生株の間に有為な差を認めた。本年は口腔細菌に対する共凝集能、菌体表層の疎水性について検証した。 S. mutans野生株のいくつかの口腔細菌に対する共凝集能を調べたところ、Fusobacterium nucleatum、Porphyromonas gingivalisに対しては共凝集が認められた。続いて各Sortase関連遺伝子欠損株について検証を行ったところ、F. nucleatumとの共凝集は、srtA欠損株で共凝集能の低下、wapA欠損株でわずかな低下を認めた。spaP欠損株では反応後1時間経過地点では有意な低下を示したが、終了時には親株とほぼ同等の値を示した。P. gingivarisとの共凝集では、srtA欠損株で共凝集能の低下を認めたが、6つの欠損株の中では共凝集能の阻害が認められたものはなく、反対にspaP、wapE欠損株ではわずかに共凝集が促進された。 菌体表層の疎水性については、srtA欠損株、spaP欠損株、gbpC欠損株の疎水性が減少した。細菌の疎水領域は細菌の付着に影響を与える因子とされ、この結果は先の初期付着能の検証結果を裏付けるものとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は関連が疑われるタンパクについてはペプチド、抗体の作製を行う予定であったため、6種のSortase依存性タンパクについて各々大腸菌発現株を作製したのだが試行を重ねてもタンパク発現が確認されなかった。ゆえに、今回の研究ではペプチド、抗体作成は行わず、性状解析を中心とするように研究計画の変更を行った。
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今後の研究の推進方策 |
Streptococcus mutansは通性嫌気性グラム陽性菌であり、う蝕を誘発するため、歯面へ付着・集積する能力、スクロースを代謝してグルカンを産生する能力、糖を代謝して有機酸を産生する能力、酸性環境下に適応する能力などの病原性因子を保有している。グラム陽性菌において、菌体表層タンパク質は宿主細胞への付着・侵入、食細胞に対する抵抗性、栄養源の分解などの機能を保持し、いくつかの結合様式で細胞壁に局在するが、その中のひとつにSortaseによる結合がある。このような病原性を発揮する因子として、一部の表層因子の報告はあるが、網羅的な報告はまだない。 当初は関連が疑われるタンパクについてはペプチド、抗体の作製を行う予定であったため、6種のSortase依存性タンパクについて各々大腸菌発現株を作製したのだが試行を重ねてもタンパク発現が確認されなかった。そこで本研究の推進方策を、S. mutansの代表的な表層因子としてのSrtA依存性タンパク質についての網羅的な解析を主軸としたものに変更する。 現在までに行っている初期付着能、唾液凝集能、共凝集能、菌体表層の疎水性に加えてバイオフィルム形成能、細胞間基質結合能についても検証を予定する。初期付着能については、付着対象を現在行っている細胞付着用プラスチック製カバースリップに加えて歯冠修復材料についても検証する。 また、各遺伝子の多型性について検証するため、S. mutans臨床分離株の全ゲノム配列から各タンパクについて遺伝子系統樹を作成を予定している。
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