研究実績の概要 |
成分の明らかな単相無血清培養系にて、フィーダー細胞を用いず、医療廃棄物である健常人抜去智歯の歯髄組織を利用したヒト歯髄由来細胞から人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell:iPS細胞)を誘導し、その未分化性と分化多能性を維持している。しかしながら、その未分化性と分化多能性を維持する細胞増殖因子に関して、必要な因子を正確に解析することは非常に困難であるため、細胞増殖因子やその他のタンパク因子のスクリーニングに取り組んでいる。 単層無血清培養系にて、ヒト歯髄由来細胞からiPS細胞を誘導し、継代維持を行いながら、その未分化性と分化多能性の確認(Oct3/4,Sox2,Nanog,Esg1,DPPA2,Rex1などの未分化マーカー遺伝子の発現、Oct3/4,SSEA4などの未分化マーカータンパクの発現、免疫不全マウスでのテラトーマ形成能)を行った。また、細胞のコンタミネーションやDNA損傷などが起きていないかを確認するため、STR遺伝子型解析や染色体解析なども行った。さらに、FGF添加(Fgf2,Fgf2+TGF-β,Fgf2+アクチビン,TGF-β,アクチビンetc)もしくはFGF無添加条件にて、FGFの添加(添加濃度0, 0.1, 0.5, 1, 2, 5 ng/mlの調節,処理時間0~72時間など,と分化多能性(Nestin,βⅢtubulin,MAP2,SMA,AFP)の維持との関わりについて検討している。本年度は上記iPS細胞よりcDNAし、遺伝子発現プロファイルを網羅的にスクリーニングし、ヒトiPS細胞における未分化性と分化多能性の維持に関わる因子の探 索を行っていく。また、同細胞よりゲノムDNAを抽出し、超音波粉砕により断片化し、これらを網羅的にシーケンスすることによって、未分化性と分化多能性の 維持に関わる遺伝子の探索を行っていくための細胞数を確保しているところである。
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