研究課題
若手研究
先天異常をもつ患者の治療計画立案にあたり、疾患に対する診断を下すことは、患者の成長のみならず予後の予測という観点からも大変重要である。しかしながら、技術的制約から分子遺伝学的検査による確定診断は導入が進んでおらず、臨床所見のみにより診断を行っている場合が多い。本研究では、顎顔面領域に形態異常をきたす先天異常症候群の原因遺伝子を候補遺伝子とした上で、網羅的に解析できるシステムを構築し、その有効性を検証する。併せて対象者の臨床所見との相関を検討し、今後の矯正歯科診断時に必要な根拠を創出する。
顎顔面領域の先天異常症候群に対する網羅的遺伝子検査を行えるシステムを開発すべく、対象とする疾患の選定を行なった。東京大学医学部附属病院口腔顎顔面外科・矯正歯科外来へ矯正歯科治療目的に過去10年間に受診をした患者を対象に対象疾患の抽出を行い、リスト化した。結果、単一遺伝子疾患の原因遺伝子を選定し、候補遺伝子とした。合わせて、症例数の多い、マルファン症候群について、疾患特有の特徴について分析を行なった。今後、他の症候群も含め、遺伝子型と表現型の関連を調査するための基礎的な資料を作ることができたと考えられた。
市場には、多くの遺伝子を網羅的に検査できるExome解析や遺伝子パネルが上市されているが候補となる遺伝子が多く、データ分析が煩雑となる、検査にかかる時間、費用が余計にかかる、偶発的発見における倫理的な問題もあることを考えると、標的を絞った検査方法を確立することは今後、遺伝子検査を広く実施する上で有益であると思われた。近年、矯正歯科外来を受診する先天異常症候群患者においては、すでに遺伝学的検査を行い、診断を得ている患者も増加しているものの、歯科領域で検査を行える施設は少ないと思われる。患者への遺伝カウンセリングを含め、体制作りが必要と考えられる。本研究はその一助となるのではないかと思われた。
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日本口蓋裂学会雑誌
巻: 45 号: 3 ページ: 203-212
10.11224/cleftpalate.45.203
130007940835