研究課題/領域番号 |
19K19413
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分58020:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含む
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
井戸 章子 岐阜薬科大学, 薬学部, 助教 (00336629)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2020年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 皮膚感作性試験 / Local Lymph Node Assay / OECDテストガイドライン / 動物愛護 / リンパ球 / T細胞 / 代替法 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、実験動物福祉に関する法律や指針が厳しくなっている。しかし動物を用いない代替法のみで化学物質の安全性を評価するには問題点が多い。皮膚感作性評価では、OECDテストガイドラインに収載されているLocal Lymph Node Assayが、現在化学物質等の皮膚感作性確定試験として用いられている。本試験法は実験動物へのストレスは少ないが、結果を得るためには最終的に動物を屠殺しなければならず、動物愛護の面においてはまだ改善すべき問題が存在する。 本研究では、我々が独自に作製したルシフェラーゼ発現遺伝子改変マウスとin vivoイメージングを用いた試験法を確立し、この難題の解決を目指す。
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研究実績の概要 |
近年、動物愛護の観点から動物実験の適切な施行の国際原則である3R(Replacement・Reduction・Refinement)の推進が強く求められているが、動物を用いない代替法のみで化学物質等の安全性を評価するには問題点が多く、Replacementを除く2Rを強く反映したin vivo試験法の開発が必要である。経済協力開発機構(OECD)のテストガイドライン(TG)に掲載されているLocal Lymph Node Assay (LLNA)は、化学物質等の皮膚感作性のリスクをマウスで予測できる優れた方法である。しかし従前の試験法よりも実験動物へのストレスは少ないものの、最終的に動物を屠殺しなければならず、動物愛護の面でまだ改善すべき問題が多い。本研究では、我々が独自に作成した、リンパ球でルシフェラーゼを高発現しているトランスジェニック(Luc-TG)マウスとin vivoイメージング技術を用いた試験法を新たに確立し、この難題解決を目指す。 2020年度は、既知の感作性物質を用いて、Luc-TGマウスのLLNAにおける応答性を確認した。本来OECD-TG429において、LLNAで使用するマウス系統はCBA/CaあるいはCBA/J系が推奨されている。しかし我々が作製したLuc-TGマウスは、免疫研究や免疫毒性試験のツールとして用いるためにBALB/c系統に戻し交配している。そのため、このLuc-TGマウスを用いたLLNAにより、化学物質の皮膚感作性が正確に評価できるかを検討した。その結果、今回用いた極強度感作性物質の2,4-ジニトロクロロベンゼン(DNCB)、軽度感作性物質のα-ヘキシルシンナミックアルデヒド(HCA)ともに既報と同等の結果を示した。よって、Luc-TGマウスはLLNAにおいて化学物質の皮膚感作性を正確に評価できることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度はLuc-TGマウスのリンパ球の基礎的データの集積を行い、ルシフェラーゼによる酵素基質反応により、LLNAのエンドポイントであるリンパ球(T細胞)の増殖を評価できる可能性が示唆された。 2020年度はLuc-TGマウスを用いたLLNAについて検証した。我々はLuc-TGマウスを免疫研究や免疫毒性試験のツールとして利用するためにBALB/cマウスを用いて戻し交配を行い、系統維持している。BALB/c系統は白色であるためin vivoイメージングにも適している。そこで既知の感作性物質を用いて、Luc-TGマウスのLLNAにおける応答性を確認した。プロトコールはOECD-TG429に準じた。DNCB(0.04、0.2、1.0 w/v%)またはHCA(7.5、15、45 v/v%)をそれぞれ耳介に3日間連続塗布し、その3日後に3H-チミジン(3H-TdR)を静脈内投与して5時間後に屠殺、耳介リンパ節細胞を全量回収し、液体シンチレーションカウンターで3H-TdRの取り込み量を測定した。LLNAの評価では、感作群の3H-TdR取り込み量を示すDPM値をControl群のDPM値で割った値を刺激指数 SIとし、その値が3以上となる用量域は感作性が陽性であると判定する。さらにSI値が3となる際の用量をEC3といい、EC3によって感作強度が分類される(極強度:0.1%以下、軽度:10~100%)。本検討でのEC3はそれぞれ0.02%(DNCB[極強度])、12.9%(HCA[軽度])となり、両被験物質とも既報と一致した。これらの結果を踏まえ、2020年度はさらに、皮膚感作性物質評価におけるLLNAと発光検出法との比較検討を実施する予定だったが、新型コロナウイルス感染症感染拡大の影響により一部実験を進めることができなかった。しかし現在検討の準備を進めており、おおむね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度はまず、2020年度に実施できなかった皮膚感作性物質評価におけるLLNAと発光検出法との比較検討を行う。LLNAと同様の条件でリンパ球細胞自体の発光を検出した場合の結果とLLNAの結果を比較検討することで、in vivoイメージングのエンドポイントとしての発光検出の妥当性について検証する。発光における評価についてもLLNAと同様、被験物質をマウスの耳介へ1日1回3日間連続塗布し、最終塗布から3日目に屠殺して耳介リンパ節細胞を全量回収する。その後イメージングシステムを用いてマルチウェルプレート上にてその発光を検出し、LLNAで得られた感作性の評価と比較する。被験物質は、2020年度にLLNA評価で用いた既知の感作性物質(DNCBおよびHCA)を用いる。 さらに、最終目標である「マウス生体でのin vivoイメージングによる皮膚感作性物質評価」を検証し、2Rを満たす新たな試験法のプロトコールの確立を試みる。実験は、LLNAと同様に被験物質を耳介へ1日1回3日間連続塗布し、最終塗布後1~3日目にルシフェリンを静脈内投与し、麻酔下で生かした状態のまま、イメージングシステムを用いて動物の耳介リンパ節付近の発光を検出する。LLNAに準ずるのであれば、最終塗布後3日目に検出を行うことになるが、経時的な検出を行うことでin vivoイメージングにおける最適な検出時期についても検証し、プロトコールの確立を試みる。
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