研究課題
若手研究
本研究は、肥満・内臓脂肪などの代謝異常や高齢化が自律神経障害と深く関連するという我々の研究成果を基に、代謝異常、高齢化が自律神経機能障害を介して左室拡張機能障害をもたらし、心不全の発症に関与するという仮説を検証することを目的とする。心機能正常の代謝異常患者に対して心拍変動による自律神経機能を評価し、心機能の変化を主要なアウトカムとした前向きコホート研究を実施する。
近年、左室収縮機能が保持されている拡張性心不全:HFpEFが増加している。HFpEFの予後は、EFが低下した心不全: HFrEFと同程度であると報告されており、両者それぞれの患者背景の特徴やリスク因子を把握することは心不全発症抑制のためには不可欠である。HFpEFの患者背景の特徴として高血圧症、糖尿病などの合併が多いことが指摘されているが、最近では生活関連因子である睡眠との関連も指摘されている。申請者はHFpEFを来す左室拡張機能障害のリスク因子として高血圧症や糖尿病、睡眠を予想し、それについて自律神経機能の関与を想定し研究することとした。心不全を発症していない代謝異常患者における自律神経機能と左室拡張機能の関連を耐糖能異常、インスリン抵抗性、肥満の関連から横断的に検討した研究では耐糖能異常・糖尿病患者では左室拡張機能の有意な低下を認めた。内臓肥満患者も有意な左室拡張機能低下を認めた。一方、自律神経機能は左室拡張能指標(E/A)と有意な正の相関関係を示し、代謝異常患者において、自律神経機能異常は、心不全発症前から左室拡張機能に影響する可能性が示唆された。また糖尿病患者における夜間高血圧と左室拡張能悪化との関連を,非糖尿病患者と比較して前向きに検討した研究では糖尿病群では夜間高血圧であるRiser型及びnon-Dipper型は左室拡張機能悪化と有意に関連し,患者背景調整後も同様の関連を認めた.非糖尿病群ではこの関連は認められなかった。糖尿病患者における左室拡張能悪化に夜間高血圧が強く関連することが示された。また、HFpEF と睡眠の関連についても検討した。心不全未発症の患者の登録時点における睡眠の問題が心拡張機能へ与える影響について前向きに検討した結果、客観的に評価された睡眠時の無呼吸と睡眠の質の低下がそれぞれ独立して将来の心拡張機能低下と有意に関連することを示した。
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