研究課題/領域番号 |
19K19513
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分58050:基礎看護学関連
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
瀬戸山 陽子 東京医科大学, 医学部, 准教授 (20649446)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 障害のある看護職 / 障害のある看護学生 / 当事者の語り / インタビュー / ナラティブ / 障害学生 / 看護職 / 看護学生 / 語り / DIPEx |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、Database of Individual Patients Experiences(DIPEx)の方法論を用いて、病いや障害を持つ看護学生/看護職の体験談を収集し、他の当事者や社会の理解促進に活用する。国内外のレビューを経て、当事者にインタビューを行い、体験談を視聴できる形で公開するとともに、プロフェッショナリズムとダイバーシティのバランスに関して言及し、論文等の形で公表する。
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研究実績の概要 |
本研究は、障害や病いを持ちながら就業/修学する看護職や看護学生の語りを蓄積・分析することを通じて、当事者の体験を明らかにすることを目指した研究である。 インタビューに関しては、2023年度までに20名のインタビューを行った。インタビュー協力者の障害別の内訳は、聴覚障害3名、肢体不自由4名、内部障害8名、発達障害4名、精神障害3名(重複あり)である。年代は、20代7名、30代3名、40代5名、50代3名、60代1名、70代1名であり、女性11名、男性9名だった。障害を持った時期に関しては、先天性の者が1名、幼少期が2名、10代が5名、20代が8名、30代が2名、40代が4名(重複あり)であった。 語られた内容に関しては、【看護を選んだ理由】では、自らの病いや障害が看護職を選択するのに影響した人々が、「ケアを受けた看護職に影響された」ことや、「障害や病いの経験を活かせる職業だと思った」こと、また、「同じ障害の人のために役立ちたかった」、「同じ障害のある医療者がいた」といった語りが見られた。また、【障害を伝える思い】では、「伝えない理由」や「医療現場で伝えること」、「伝えたことがきっかけの離職」の体験、「伝えるか否かをどう決めたか」、「伝えて良かったこと」、「伝えることの必要性」が語られている。さらに、学生時代や職場それぞれにおいて【環境調整や合理的配慮】の体験や、【人間関係】、【就職・転職活動】、【工夫や心がけ】の体験等が語られている。 研究成果として2023年度に、「障害のある看護学生の演習・実習での体験: DIPEx-Japan「障害学生の語り」データの2次分析(聖路加看護学会誌)」、「障害のある医療系学生と共に学ぶ支援体制整備に向けた論点の整理(医学教育)」の2本が公開された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現時点では20名が完了している。インタビューデータからは、【看護を選んだ理由】【障害を伝える思い】【環境調整や合理的配慮】【人間関係】【就職・転職活動】等のテーマが見いだされてきた。 協力者の目標数は30名であったが、2019年より流行した新型コロナウイルス感染症の影響を受け、現職の看護職のインタビュー協力を仰ぎにくい状況である。一部、感染症流行前に内諾を得られていた看護職も、多忙のために具体的なインタビューの日程調整が行えていない。またインタビューを完了した方に関しても、データの確認を依頼後、多忙のために戻りが遅くなるという状況も重なってしまっている。語りのデータの分析と成果物である「障害のある看護師看護学生の語り」のウェブページの公開を優先するため、現在はリクルートを一時休止し、分析及び公開に向けての準備を進めている。具体的には、「One Sheet Of Paper(OSOP)」という、1つのコードを付けた語りを1枚の紙の上に配置してカテゴリー分けをする分析をしたのち、「トピックサマリー」というウェブサイトに公開する形のテキストデータを執筆・チェックしている最中である。 研究期間中に米国にある障害のある看護職の支援団体であるExceptional NurseやNational Organization of Nurses with Disabilitiesなどの活動視察を予定していたが、そちらも2023年度は先方との調整が付けられず、実現できていない状況である。 以上、当初の計画からインタビュー協力者数は目標に達しておらず、現在はインタビュイ-はいったん休止して成果物公開に向けた分析段階に入っているものの、海外への視察に関しては目途が立っておらず、全体としては「やや遅れている」という状況である。
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今後の研究の推進方策 |
現在本研究で公開予定の20名の語りのテキストデータに関しては、全てコーディングが完了している段階である。すでにいくつかのコードに関して、OSOPやトピックサマリーは公開に向けた分析が終了しているが、引き続き他のコードに関してOSOPやトピックサマリーを作成する。本研究では、テーマに関連して社会学や心理学等の背景を持つ様々な有識者からなるアドバイザリーボードを組織しトピックサマリーの原稿を各視点からチェックしてもらうが、本研究におけるアドバイザリー委員は既に委嘱済みで体制は整っており、20名分のプロフィールはアドバイザリー委員2名によるチェックが完了している。他のトピックサマリーに関しても今後のチェック体制が構築できている。 また海外視察に関しては、研究期間が長くなってコストがかさんでいることや、円安の影響を受けて、米国の障害のある看護職の支援団体であるExceptional Nurseの視察や、Exceptional Nurseの創始者であるDonna Maheady 氏への助言を得る目的での訪問渡米が現実的ではない可能性もある。その場合は、オンラインでのヒアリング等だけでも可能かを打診し調整を行っていくことを計画している。 2024年度内にDIPEx-Japanのウェブサイト内において、20名分のデータ分析をもとにインタビュー映像を編集し「障害のある看護職・看護学生の語り」ウェブページを公開する予定である。またウェブページ公開後は、広くウェブページの存在を当事者及び障害のある看護学生・看護職と共に学び働く方々へ知っていただくために、オンラインでの公開シンポジウムを計画している。公開シンポジウムでは、実際にインタビューに協力してくださった方を含め、教育関係者や職場の管理者を交えて、障害のある看護学生・看護師が共に学び働く環境づくり向けたディスカッションを行う予定である。
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