研究課題
若手研究
心不全の特異的な病態のひとつに自律神経機能異常があり、自律神経機能を臨床で評価することは重要である。しかし、評価に用いられることが多い心拍変動解析は測定と解析が煩雑であり、自律神経機能の評価が蔑ろにされることが多い。そこで、本研究は、容易に測定が可能な瞳孔対光反応で得られる指標が、臨床における新たな自律神経機能の評価方法として応用が可能か否かを明らかにすることを目的として計画した。本研究では、心拍変動解析との整合性や、自律神経機能と関係することが明らかとなっている各指標との関連に加え、縦断的な変化を検証する予定である。
本研究は、瞳孔の対光反応が、心不全患者における自律神経活動の評価方法として日常臨床に応用可能か否かを明らかにすることを目的として開始した。一昨年度、COVID-19の流行に伴い感染予防の観点から、瞳孔機能の測定は中断した。本年度は、所属機関から許可を得られ次第測定を再開する予定としていたが、度重なる流行の繰り返しによって診療制限が断続的に続けられており、本年度においても瞳孔機能の測定は中断したままとなっている。そのため、本年度に予定していたほかの自律神経機能指標と瞳孔機能との関連の解析は完結していない。そこで、関連する領域の研究を並行して進めることとした。その結果、入院から外来にかけて心臓リハビリテーションを完遂した心不全患者において、手段的日常生活活動(Instrumental activities of daily living: IADL)の実施頻度が多いと全死亡や全死亡と心不全による再入院で定義される複合イベントが少なくなることを明らかにし、スペイン・バルセロナで開催されたEuropean Society of Cardiology Congress 2022においてその成果を発表した。また論文として執筆し、8月にJournal of cardiovascular development and disease (Impact factor: 4.415)に掲載された。また、急性心不全で入院した患者における入院後早期の歩行速度とアウトカムとの関連を明らかにし、2023年5月に開催予定の欧州心不全学会においてその成果を発表予定であるとともに、現在論文として投稿中である。今後、研究実施期間を延長してさらなる研究結果を発表していく予定である。
2: おおむね順調に進展している
瞳孔の対光反応測定を行うためには専用の機器(ゴーグル)を眼周囲にあてなければならず、SARS_CoV_2が流行している現状では、感染拡大防止の観点から、測定を中止せざるを得なくっており、データ蓄積は停滞しているが、当初の目標症例数は達成できている。また、関連分野での研究結果を順次発表できており、研究成果を上げることができている。
症例数は目標に到達したため、瞳孔の対光反応と運動耐容能や他の自律神経活動指標との関連、瞳孔対光反応と身体活動量の関連などについて、前向きが困難なため、暫定的に後ろ向きにデータ収集および解析を行い、その結果を発信していく予定である。また、関連領域の研究結果も報告していく予定である。
すべて 2023 2022 2021 2020 2019
すべて 雑誌論文 (36件) (うち国際共著 26件、 査読あり 36件、 オープンアクセス 26件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 3件、 招待講演 6件)
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