研究課題
若手研究
健康寿命の延伸は超高齢社会における喫緊の課題であるが、近年、運動による骨格筋刺激が老化を抑制する可能性が示されている。しかし、骨格筋における運動刺激の感知と、抗老化作用としてのミトコンドリア機能改善機構は不詳である。申請者は、細胞外マトリックス(ECM)分子であるパールカンを欠損したマウスでは、骨格筋におけるミトコンドリア量が増加することを見出した。本研究では、パールカン欠損骨格筋細胞における運動負荷時のミトコンドリア機能変化と、他臓器のミトコンドリア機能を改善させうるマイオカインを特定する。これにより、ECM一分子を基軸とした運動効果の抗老化作用の解明と加齢性疾患の治療開発への貢献を目指す。
筋内ミトコンドリア変化を中心とした運動効果の分子機構を、細胞外マトリックス分子パールカンに焦点をあて検討した。パールカン欠損骨格筋では、免荷(尾部懸垂)時のPGC1αのタンパク質発現量低下率が抑制され、定常ないし運動負荷時のPGC1αやミトコンドリアダイナミクス関連因子の遺伝子発現量が増加傾向となった。つまり、パールカンは筋内ミトコンドリアの量だけでなく質にも影響する可能性がある。一方、運動後の筋内パールカン遺伝子発現量の変化は明らかではなかったが、そのヘパラン硫酸鎖を修飾する酵素の発現量変化が見出された。よって、パールカンは運動時に糖鎖構造を変化させ運動効果をもたらす可能性が示唆された。
近年、運動による各種疾患や老化に対する抑制効果が示され、骨格筋機能維持の重要性が着目されてきた。本研究成果は、運動刺激増減時の骨格筋動的変化に細胞外マトリックス一分子が一役を担っている可能性を示すものである。現在、本研究で明らかとなったパールカン制御性のシグナル変化に加え、電気刺激やストレッチチャンバーを用いた細胞運動モデル、パールカン欠損筋衛星細胞の培養系を併用することで他臓器への影響をもたらす遠隔効果因子の解明に着手している。これにより、適切な運動強度の検証や運動模倣薬の開発といった運動効果の臨床応用に向け、新たな分子学的アプローチへ貢献することが期待される。
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