研究課題/領域番号 |
19K20212
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分60010:情報学基礎論関連
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研究機関 | 統計数理研究所 (2023) 東京大学 (2019) |
研究代表者 |
相馬 輔 統計数理研究所, 先端データサイエンス研究系, 准教授 (90784827)
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研究期間 (年度) |
2022-12-19 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | スペクトル疎化 / 組合せ最適化 / 集中不等式 |
研究開始時の研究の概要 |
行列集中不等式は,ラプラシアンソルバーや,グラフの疎化,ネットワークフローアルゴリズムなど幅広い応用がある.一方で,既存の行列集中不等式は組合せ構造を扱うための柔軟性に欠け,アルゴリズム設計の自由度が乏しいという課題がある.本研究計画では,組合せ構造を扱える新たな行列集中不等式の開発と,それに基づくアルゴリズムの設計を行う.
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研究実績の概要 |
今年度はハイパーグラフのスペクトル疎化に対するオンラインアルゴリズムの開発に取り組んだ. ハイパーグラフのスペクトル疎化とは,元のハイパーグラフの性質をよく近似しつつ枝数を大幅に削減する技法で,ハイパーグラフ上の最適化問題に対する前処理として活用でき,計算量の改善を見込める.ハイパーグラフのスペクトル疎化は,申請者の共同研究により2019年に導入され,その後も枝数の改善が推し進められてきた.現在は,頂点数に対しほぼ線形個の枝しかもたないハイパーグラフを出力するアルゴリズムが提案されている. ところが,既存のスペクトル疎化のアルゴリズムはオフライン型,すなわち,元のハイパーグラフを一旦メモリに格納した上で,枝数の削減を行うというものであった.そのため,素朴には頂点数に対して指数サイズのメモリを必要とする.これは,最終的に出力されるハイパーグラフが頂点数に対しほぼ線形個の枝しかもたないこととは対照的に,非効率的であった. 本研究では,入力のハイパーグラフがオンラインで逐次的に与えられる設定を考え,メモリ使用量の少ないスペクトル疎化アルゴリズムを設計した.具体的には,既存のオフラインのスペクトル疎化アルゴリズムに近い枝数削減を達成しながら,メモリ使用量は頂点数の2乗程度で抑えられるアルゴリズムを設計した.アルゴリズムの解析では,本課題のテーマである行列集中不等式の技法とともに,generic chainingと呼ばれる高度な確率解析技法も利用した.本成果は,組合せ最適化の国際会議であるInteger Programming and Combinatorial Optimization (IPCO) 2024に採択された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スペクトル疎化は,グラフやハイパーグラフ上の様々な組合せ最適化問題に対する前処理として活用でき,理論計算機科学において重要なトピックである.ハイパーグラフのスペクトル疎化も,申請者の共同研究による導入以後,国内外様々な研究グループにより枝数の改善が進められてきた.その上で,オンライン型のアルゴリズムを開発したのは本研究が最初であり,ハイパーグラフのスペクトル疎化に対する大きな貢献を果たしたものと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は,2020年度~2022年度の間,海外における研究滞在による研究中断を行った.そのため,2018年の申請当時に挙げた具体的な研究テーマの中には,既に他のグループにより解決されるなど,現在では実施が難しくなったものもある.一方で,行列集中不等式で使われる半正定値行列や行列解析を用いたアルゴリズム設計は,依然として最先端の研究トピックであり続けている.今後は,上記のハイパーグラフスペクトル疎化など,広く行列集中不等式の関連技法を用いた組合せ最適化アルゴリズム設計をテーマに研究を推進していく.
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