研究課題/領域番号 |
19K20547
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
赤池 慎吾 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 准教授 (50570199)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 禁伐林 / 高知県 / 保安林 / 魚付き林 / 水源涵養林 / 台湾 / 漁業林 / 日治時期 / 植民地 / 高知 / 公益的機能 / 森林保全 / 土佐藩 / 環境保全 / 土佐藩・高知県 / 台湾森林令 / 森林保護 / 森林管理 |
研究開始時の研究の概要 |
公益上必要な森林を保全するために森林利用に制限が加えられる歴史は、明治30年森林法保安林制度により確立したといえるが、江戸期においても「山川藪澤之利」を保全する種々の制度・慣習が全国各地に点在していた。 本研究は、「公益」の発揮を目的に造成された森林の特徴を江戸期に遡って把握した上で、その後「公益性」が明治期、帝国日本時期(植民地支配の時期)の「保安林制度」にいかに形成されたかを、日本・台湾を対象として明らかにする。特に、公益林を取り巻く行政・科学思想・所有構造・管理者の社会経済的動向が、森林管理に与えた影響を法制度と地域社会との関係を基軸にして考察するものである。
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研究実績の概要 |
2023年度前半は、これまでの研究で明らかとなった明治期に指定された高知県内303カ所446町歩の「禁伐林」を対象に、「小林区署全図」(明治中期作成)と現在の土地図面との照合を行った。高知県中芸地区(奈半利町、田野町、安田町、北川村、馬路村)では、明治20年代の森林管理・木材生産の現状と課題を国家官僚の視点から把握し、統計資料を用いて伐採樹種・量を定量的に明らかにした。これら研究成果の一部は学術図書「第11章 森をつくる統治:魚梁瀬山を巡る統治機構と地元民」(分担執筆)内藤直樹・石川登編『四国山地から世界をみる : ゾミアの地球環境学』として発表した。同県梼原町では、食料生産のための山地利用として古くから「伐畑」(焼き畑)が行われてきた。「禁伐林」及び国有林内の伐畑が厳しく制限される中、民有林における食料生産や採草の実態を『土地図面』及びライフヒストリー調査から把握した。これら研究成果は、『梼原町ライフヒストリー集 : 「森」ではなく「山」とよばれていた時代の人々の記憶』(共著)として刊行した。これにより、山間部における「禁伐林」の実態調査はほぼ終了した。 2023年度後半は、海岸部における「禁伐林」の歴史的変遷について、「小林区署全図」(明治中期作成)と現在の土地図面との照合作業を行った。明治期に存在した「禁伐林」の多くは、消波ブロックや道路敷設等により消滅していたことが明らかとなった。現存する「禁伐林」の中から、高知県室戸市、奈半利町、田野町、安田町の海岸林に焦点を当て、現況調査を行った。また、森林保全の歴史とその現代的活用については、台湾国立雲林科技大学で開催された2024跨域創新設計整合國際研討會において、「地方創生實踐活化在地博物館-日本高知縣446人安田町居民動起來-」と題した発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は、研究協力者とのオンライン会議を通じて、現地情報の把握と資料リストの共有を行った。研究成果の一部を国際学会等で発表した。これにより本研究課題について、国立高雄科技大学海洋事務研究センターの研究者らとの交流が生まれ、日治時期における海岸林の「保安林」指定と保全に関するオンライン研究会を行い、次年度以降の研究のためのネットワークと研究環境が整備された。
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今後の研究の推進方策 |
本研究期間に新型コロナウイルス感染症対策の影響で行うことが出来なかった台湾での現地調査・資料調査を改めて実施する。台湾での研究に専念するため、2024年4月から2025年3月にかけてサバティカル研修を利用して、国立高雄科技大学海洋事務研究センターの兼任副教授として赴任することが決まった。海洋・漁村研究者らと研究交流を通じて、地方行政や地域住民らとのネットワークを構築し、台湾における保安林の史的展開過程を明らかにする。
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