研究課題/領域番号 |
19K20584
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分80030:ジェンダー関連
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研究機関 | 大阪公立大学 (2022-2023) 大阪府立大学 (2019-2021) |
研究代表者 |
内藤 葉子 大阪公立大学, 大学院現代システム科学研究科, 教授 (70440998)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | マリアンネ・ヴェーバー / 自然 / 優生思想 / 母性保護連盟 / マックス・ヴェーバー / 新カント派 / ケアの倫理 / 人間の尊厳 / ドイツ市民女性運動 / J・G・フィヒテ / ハインリッヒ・リッカート / 第一次世界大戦 / 戦争協力 / 市民女性運動 / 女性参政権 / 人種衛生学(優生学) / 売春管理制度 / 主体性 / ドイツ女性団体連合 / 優生学(人種衛生学) / 結婚 / 性愛(エロス) / 身体性 / ジェンダー / 科学 / 女性の権利 / 女性運動 / ヴェーバー / 帝政期ドイツ |
研究開始時の研究の概要 |
近代以降、性をめぐる言説のなかで女性の身体性と主体性の関係はどのように論じられてきたのか。本研究はこの問いに、帝政期ドイツの市民女性運動を牽引した女性たちに焦点をあてて接近する。性やセクシュアリティをめぐって政治的・文化的・科学的な対立が起きていた当時のドイツにおいて、女性の身体性と主体性の関係は、女性性を本質的なものとして〈自然〉へと還元する言説とリベラルな言説との対抗関係のなかで問われていた。本研究は、男性科学者によって構築された知に影響を受け、またそれに抗しながら、女性の身体性と主体性をめぐって葛藤したフェミニストたちの思考の軌跡を、とくに思想史の観点から明らかにするものである。
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研究実績の概要 |
本研究は、帝政期ドイツ市民女性運動の担い手の思想と活動を、女性の身体性と主体性の関係をめぐるコンフリクトのなかで再定位し、明らかにすることを目的としている。2023年度は以下の点を中心に進めた。 第一に、国際ジャーナルに投稿し査読を経た本研究課題の英語論文を、加筆修正のうえ再投稿した。内容については、帝政期ドイツにおいて性をめぐる自然科学的言説と女性の主体性に関する議論が交差するなかで、母性保護連盟に集った急進派のフェミニストや男性科学者の言説、およびそれらを批判的にみていた穏健派のマリアンネ・ヴェーバーの思想を〈自然〉概念を中心に検討することで、ヴェーバーが女性の主体性をどのように構想したのかを明らかにしたものである。本研究は、ヴェーバーの批判が当時の自然科学的言説に内在する優生学的関心への警戒と関連していること、またその批判の立脚点は、彼女の市民的価値観だけにあったのではなく、「存在(Sein)と当為(Sollen)の区別」「事実と価値の分離」を唱える新カント派哲学にもあったことを強調した。さらにこの点は、夫であるマックス・ヴェーバーを中心としたドイツ社会学創成期における科学の客観性をめぐる論争に接していることも指摘し、ジェンダーに関わる領域もこうした知的状況と無縁ではなかったことを突き止めた。 第二に、公私二元論を培ってきた西洋政治思想をフェミニズム理論の観点から批判的に考察するものとして、ケアの倫理と人間の尊厳に関する論考を英語論文として執筆し共著として公表した。この成果により、女性の身体性と主体性の関係について哲学的・思想史的に考察を深め、本研究課題を長期的かつ別様の観点から捉えなおすことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染拡大防止のため、資料収集先のドイツは外務省および大学当局から原則としてレベル3の渡航禁止対象国であり続け、海外渡航による資料収集の予定が当初よりずれこんだ。そのため収集した資料の読解に遅れが生じている。また2023年度からあらたな科研費研究を代表者として進めることになり、本研究を総括する作業に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
必要に応じて資料収集を行い、資料読解を進めて研究を補完しながら、これまでの研究をまとめあげる作業に着手する。
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