研究課題
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小惑星近傍では力学的に外乱の強い環境(強摂動環境)が形成され,探査機の軌道運動は強く乱される.このような環境での安定的な探査機運用は,消費燃料や小惑星との位置関係の観点から制約が大きい.そこで本研究では,強摂動環境下でも燃料消費が少なくかつ自由度の高い安定な小惑星周回軌道を研究する.具体的には,1周に1回少量の速度変化を与えることで,人工的に周期性を持たせるRTO (Retrograde Teardrop Orbit) を提案する.RTOは強摂動環境下でも安定であり,かつ自由度が高い周回軌道である.本研究では,RTOの応用として,はやぶさ2ミッションでの実用化計画を含めた解析を行う.
小惑星の重力は微小で重力場が歪であるため,小惑星近傍では物体の軌道運動は強く乱される.本課題では,小惑星近傍での探査機軌道設計手法について研究した.まず,強い外乱下でも安定な小惑星周回軌道として,1周に1回少量の速度変化を与えることで,人工的に周期性を持たせる逆行涙滴軌道を考案し,その軌道力学的性質を明らかにした.さらに理論を発展させ,探査機運動を解析的に記述することで,燃料を使わずに長期間安定となる凍結軌道の条件を導出した.加えて,反復的数値計算と重力場モデルとを応用して,はやぶさ2の高精度着陸軌道を設計した.この着陸軌道を用いて,はやぶさ2は2019年に2回のリュウグウに着陸に成功した.
本研究の成果を応用すると,より高度かつ確実に小惑星探査を行うことが可能となる.小惑星は太陽系形成当初の姿をよく保っていると考えられており,本研究による小惑星探査技術の高度化は,太陽系や生命の起源解明につながり得る成果である.実際に,はやぶさ2では本研究で設計された着陸軌道を用いて,小惑星リュウグウへの2度のタッチダウンに成功しており,小惑星サンプル採取の成功に貢献した.また,惑星科学上の学術的意義のみならず,将来の鉱物資源の獲得や,地球への隕石衝突回避につながり得る点で,本研究の成果は社会的にも大きな意義を持つ.
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)
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