研究課題
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今回の研究では、THORの発現機構を転写制御レベルで解明し、転写調節点をターゲットとした治療法の確立を目的とし、以下の4段階に分けて実験を遂行する。1)Luciferase assayを用いた、THORのプロモーターにおける最小転写責任領域の同定。2)免疫沈降法と質量分析法を組み合わせた、THORプロモーターに結合する転写因子の網羅的な解析。3)Luciferase assayと低分子化合物ライブラリーを併用した、THORの転写調節点をターゲットとした低分子化合物の同定。4)動物モデルを用いた低分子化合物の効果判定。
免疫沈降法と質量分析法を組み合わせて、THORの転写制御を調整している可能性のある2個の転写因子を同定し、これらの発現抑制による非小細胞肺癌細胞株の細胞増殖の低下も確認した。次に、THORの転写制御点を標的とした治療の可能性を検討するため、市販薬1200個の低分子化合物ライブラリーによる治療が、①細胞増殖に与える影響、②THORの発現に与える影響、③THORの転写制御に与える影響をそれぞれ、IncuCyte、qRT-PCR、Luciferase Assayを用いて解析した。これら3つも網羅的な解析の結果はいずれの2つの組み合わせにおいても互いに相関していた。
LncRNAの組織疾患特異的な発現パターンは、それを標的とした治療法の可能性を示唆するが、lncRNAは進化的保存性に乏しいため、機能に基づく論理的な治療法の確立と動物実験が困難であることが多い。一方でTHORはその発現のみでなく、作用点までもヒトからゼブラフィッシュに至るまで深く保存されているため、今回のようなその機能を元とした論理的な治療薬発見の戦略を立てることが可能であり、実際にTHOR高発現がんに対する新規化合物同定の一端を示すことが可能であった。これにより本研究はlncRNAをターゲットとした癌治療の新たな一歩となる可能性が高いと考えらる。
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Clinical Cancer Research
巻: 24 号: 22 ページ: 5658-5672
10.1158/1078-0432.ccr-18-0304