研究課題
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WNKキナーゼは、遺伝性高血圧疾患である偽性低アルドステロン症II型の原因遺伝子であり、主に腎臓での塩分出納、血圧調節に関わる。申請者は最近、WNKの下流分子Na-K-2Cl共輸送体1が骨格筋形成を制御しており、その阻害剤ループ利尿薬がサルコペニア(加齢や疾病による筋力、筋量の低下)に関与する事を見出した。本研究の目的はさらに、骨格筋の主要WNKアイソフォームWNK1に着目し、①骨格筋肥大における生理機能、②WNK1による筋萎縮関連遺伝子の転写制御機構、③骨格筋WNKシグナルを修飾する生理的因子や疾病モデル、を解明する事である。これによりサルコペニアの新たな治療戦略が創出される事が期待される。
WNK (with no lysine)キナーゼは遺伝性高血圧疾患の原因遺伝子であり,尿細管上皮細胞, 血管平滑筋に発現し生理的に血圧を制御する事が知られる。本研究で我々は①WNKアイソフォーム1-4の中WNK1のみがマウス骨格筋ないし骨格筋細胞株C2C12に発現しており,各々長期運動,分化誘導刺激によって発現量が増加すること,②WNK1が長寿遺伝子としても知られる転写因子forkhead box O (FOXO) 4のリン酸化,筋萎縮関連遺伝子群の転写活性を調節することで筋肥大を正に制御する事を示した。WNK1-FOXO4シグナルという骨格筋肥大を制御する新たな分子シグナルが明らかとなった。
サルコペニア(加齢, 慢性疾患による骨格筋量・筋力の低下)の病態解明は未だに不十分であり,運動療法,食事療法以外の治療戦略の開発が医療経済的観点からも喫緊の課題である。本研究は,慢性腎臓病・サルコペニアモデルマウスの骨格筋におけるWNK1タンパク発現量の低下,筋萎縮関連遺伝子群の転写亢進をも見出し,WNK1-FOXO4シグナルがヒトのサルコペニアの発症機序の一端を担う可能性を示した。本邦でも高齢者の約5人に1人,重症の慢性腎臓病患者においては約2人に1人がサルコペニアを合併することが知られる。今後の研究でWNK1-FOXO4シグナルをターゲットとした新たな治療戦略を創出するを目指したい。
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Kidney International
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Scientific reports
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