研究課題/領域番号 |
19K21627
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分2:文学、言語学およびその関連分野
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
渡辺 己 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (30304570)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2019年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | セイリッシュ語族 / スライアモン語 / アクセント / 音韻論 / 音声学 |
研究開始時の研究の概要 |
スライアモン語は,北アメリカ先住民諸語のひとつであり,話者があと数名しかいない言語である。この言語のアクセントについては,これまでほとんど研究がされていない。本研究課題の代表者・渡辺己は現地調査を通して,この言語の強さアクセントが,音の高低と連動していることに気がついた。そこに気がつけたのは,音の高低が重要な日本語の母語話者だからだと思われる。そこで本研究では,申請者と海外の研究協力者(英語母語話者の言語学者)の互いの母語の違いからくる音声への感覚の違いを活かすという方法により,スライアモン語のアクセントの全体像の解明に向けた共同研究をおこなう。
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研究実績の概要 |
本課題は,カナダで話されている北アメリカ先住民諸語のうちのセイリッシュ語族に属するスライアモン語について,特にいまだに解明されていないアクセント体系について,調査・研究するものである。理想的には現地で,すでに数人しか残っていない母語話者から直接の聞き取りをする計画であったが,本課題開始以降,2020年度,2021年度は新型コロナウイルスが猛威をふるい,調査地カナダへの渡航および調査がおこなえなかった。2022年度には若干状況がよくなったものの,渡航を予定していた夏期はやはりまだコロナの影響で渡航がむつかしく,現地調査はおこなえないままであった。2023年度は,本代表者以外の唯一のセイリッシュ語族研究者である清沢香氏(公立諏訪東京理科大学)に,スライアモン語と同じくセイリッシュ語族に属するハルコメレム語とリルエット語について現地調査を依頼した。清澤氏は夏季期間におよそ1ヶ月の調査をおこなった。いずれもスライアモン語より,さらに複雑なアクセント付与規則を持つと言われている言語であり,これら3言語の比較対象により,スライアモン語のアクセントの本質解明にも大きく貢献するデータが収集されたと考えている。 代表者・渡辺は引き続きこれまで収集してきたデータの整備および精査を続け,さらに,アクセント体系も含め,上記2言語とそれ以外にも音声的に非常に複雑なことで知られるセイリッシュ語族の言語について,先行研究も踏まえた研究を進めた。 これらの成果の一部として2023年度に2件が刊行された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
長引いた新型コロナウイルスによる世界的未曾有のパンデミックのため,予定していたカナダ・ブリティッシュ・コロンビア州での現地調査がおこなえない期間が長く,当初の計画は大幅に崩れてしまったが,2023年度は日本国内のセイリッシュ語族研究者である清澤香氏の協力を得て,共同して研究を進めることができた。代表者・渡辺己もこれまでに収集してきたデータの解析を進め,研究対象のスライアモン語以外のセイリッシュ語族の言語について,本課題テーマのアクセントを中心に,先行研究を精査するなどしてきた。清澤氏が現地調査で収集したセイリッシュ語族のハルコメレム語とリルエット語のデータと,スライアモン語の比較対象も始めており,総じて順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
海外での現地調査を研究計画の大きな柱として予定していたため,新型コロナウイルスによる世界的パンデミックがおさまらなかったことは,本課題を進める上で大きな障害となった。しかし,2023年度は,渡航に関する状況が改善したので,清澤香氏の協力を得て,セイリッシュ語族の2言語の現地調査をおこなうことができた。 これまでの研究から,アクセント付与に関する研究には,やはり音節・モーラ構造の解明が不可欠であるということがより鮮明になった。特にスライアモン語に関しては,音節の設定自体が,通常言われるように音韻レベルではなく,音声レベルで考えねばならないようであり,アクセントの現象と同等に重要な課題である。音節がどのレベルで考えられるべきなのかは,従来の音韻論,音節研究,アクセント研究に大きな一石を投じることができる可能性があり,今後の研究の方向として重視していきたいと考える。
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