研究課題/領域番号 |
19K21635
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分2:文学、言語学およびその関連分野
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
有光 奈美 東洋大学, 経営学部, 教授 (00408957)
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研究分担者 |
高嶋 由布子 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 障害福祉研究部, 流動研究員 (40792271)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2019年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 日本手話 / 対比 / 否定 / 構文 / 談話構造 / スクリプト / 非手指要素 / 辞書 / 空間 / アノテーション / 論理性 / 身体性 / 否定極性項目 / 緩叙法 / メタファー / 空間認知 / 認知言語学 / ジェスチャー |
研究開始時の研究の概要 |
手話言語の言語依存的な「分析的思考:論理性」と、分析的思考の「からだ的思考:身体経験基盤」への依存性を明らかにすべく日本語から独立した文法体系を持つ日本手話の否定表現と対比表現を分析する。ジェスチャー研究者が分析的思考とからだ的思考を異なる性質と捉えてきた一方で、Lakoffら認知言語学者は分析的思考も身体経験からのメタファー的投射で理解している。Wilcox et.al(2010)等の認知言語学的手話研究を踏まえ、本研究は分析的思考の中でも抽象度の高い否定に着目し、記号操作的論理的否定と評価的否定性や対比について日本手話での表現を検討し、手話表現を通して否定性を身体経験基盤の視点で解明する。
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研究実績の概要 |
本研究は、分析的思考の中でも抽象度の高い否定に着目し、論理的否定や評価的否定(対比)がどのような形で表現されるか、手話の否定表現における分析的思考とからだ的思考の分布を明らかにすることを目的としてきている。当該年度の研究成果の一つに、日本語用論学会第25回大会(京都大学、オンラインのハイブリッド)での研究発表「日本手話の対比構文『A否定B』の談話構造 」が挙げられる。本内容は日本語用論学会大会発表論文集に掲載予定である。具体的には、日本語と異なる構造を持つ日本手話 (cf. 木村・市田 1995, 2000) 特有の対比構文「A否定B」の用法を収集して分類し、日本語では省略されている要素を日本手話では省略せずにこの構文で言及することを指摘した。日本手話と音声日本語と比較し、「A否定B」構文を整理したところ、対比構文「A否定B」で用いられる否定のマーカーは「違う」、「しない(掌を左右に振る)」、NM(non-manuals、非手指要素)の「首振り」の3つがあった。前者2つの手指否定語にはNMの首振りが共起または先行するものだった。「A否定B」構文は、みなが想定するAと異なるBであるという有標の情報を伝える談話条件で使用される。この構文の例から、日本語と日本手話で談話の作り方が異なることがわかった。手話言語で否定表現は、非手指要素(首振り)のみで文全体の否定ができる言語と、手指要素が必要な言語に分けられるというZeshan(2006)のタイポロジーによると、日本手話は、手指要素が文全体の否定には必要だという分析がされている(Morgan 2006)。文否定には更なる検討が必要だが、本研究によって、この対比構文「A否定B」の否定要素は、手指が伴うこともあるし、非手指要素(首振り)のみでも使えるため、こうした接続用法では否定の非手指要素が手指要素を伴わず使えることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、コロナのために会話の収録や対面での打ち合わせが難しく、進捗状況としては遅れていたが、当該年度に入り、おおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
日本語用論学会での研究発表と同時並行して、ネイティブサイナーに依頼し、否定に関する会話の収録を重ねてきている。この収録内容を対象として分析を行っており、今後、学会発表を予定している。
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