研究課題/領域番号 |
19K21638
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分2:文学、言語学およびその関連分野
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
近藤 眞理子 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (00329054)
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研究分担者 |
Detey Sylvain 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (00548927)
小西 隆之 早稲田大学, グローバルエデュケーションセンター, 講師(任期付) (90780982)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2019年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 日本語訛の英語 / 英語の多様性 / 異なる第一言語話者による判定 / 分節音の分かりやすさ / 分節音の明瞭度 / 外国語訛度 / 母語話者度 / 第二言語音声発話評定 / 分節音の正確さ / 人による評定 / 流暢さ / 発話速度 / 機械評定 / 音声発話コーパス / 第二言語習得 / 音声コミュニケーション / 音声自動評価 / 流暢さ自動評価 / 学習支援システム |
研究開始時の研究の概要 |
英語コミュニケーションを情報伝達の正確さの観点から、非母語話者を含む言語ユーザーが、情報伝達のために最低限達成しなければならない外国語音声習得の規準を明らかにし、そのための音声教育法を提唱することを目的とする。これまでの外国語教育では、いかに母語話者の発音に近づけるか、対母語話者を意識した教育が中心であったが、非母語話者間の情報伝達、意思の疎通を想定した、音声コミュニケーションの疎外となる、第二言語音声習得の問題点を、日本語、英語、仏語を軸に検証し、一般の外国語ユーザーが理解できる発音と理解できない発音の境界を解明する。結果を基に、最低限通じる発音教育のための学習支援システムの構築を目指す。
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研究実績の概要 |
外国語訛りの存在は、コミュニケーション・プロセスにおいて、正しい発音を妨げる可能性があり、外国訛りの存在は伝達を妨害することがある。この妨害はリズム、イントネーション、発話速度など、さまざまな特徴から生じる。発話速度など、さまざまな特徴から生じる。これはL1とL2の聞き手の知覚に影響を与える可能性がある。 2023年度は、これまでアメリカ英語話者と日本語母語話者を対象に行ってきた日本語アクセントの英語の音声特性を、異なる母語話者を対象とし、日本語アクセントがどのように知覚され、評価されるかを検証した。評価者としては、フランス語母語話者の英語学習者を対象として、実験をおこなった。評価項目は、これまでと同じく、分かりやすさ(comprehensibility)、明瞭度(intelligibility)、外国語訛度(foreign accentedness)、母語話者度(nativelikeness)について評価してもらい、アメリカ英語話者と日本語母語話者の評価と比較した。 分節音は子音と母音の両方を対象としたが、英語、日本語、フランス語の母音体系の比較が複雑であることから、分析はまず子音に注目し、フランス人母語話者が知覚する英語での日本語訛度に注目し、7つの子音(l, r, th, kh, θ, f, v)を抽出し、外国語のアクセントが母語話者と非母語話者の知覚に与える影響を分析した。また、昨今提唱されている、言語間音声の一致による音声明瞭度の利点という概念についても調査した。、 この実験の分析結果としては、第一言語が話し手と同じ聞き手は、明瞭度の極端な低下が少ないことが明らかになったが、異なる第一言語の聞き手には、母語を同じくする聞き手とは異なる利点が見られた。言語と話者のアクセントの両方が異なるという意味での言語不一致を原因とする、音声明瞭度に関する便益も観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、前年度の行う予定であった日本語とは異なる言語を母語とする英語学習者による、日本語訛の英語の評価を行うことができた。この研究の最初に計画した通り、研究協力者の勤務するパリ第八大学の英語学科の学生を対象とした知覚実験を予定していたが、パリ大学在籍の学生は、フランス語を母語としない学生、フランス語と他の言語のバイリンガル等、フランス語モノリンガルの学生が少なく、予備実験を行った結果、純粋なフランス語モノリンガルとは異なる評価をする可能性が排除できなかったため、急遽他大の協力校を探すことになった。幸い、リモージュ大学英語学科の協力を得られることとなり、知覚実験を行った。 しかし、知覚実験が2時間近くかかる設定であったため、最後まで完全に正しく完了した被験者が少なく、フランス語話者のデータが、前年度に収集したアメリカ英語母語話者と日本語母語話者に比べて少ない数となった。 そのため、知覚実験の刺激音の数を減らし、1時間の授業時間中に行える規模の実験に組み換え、リモージュ大学で新たな被験者を募って行うこととした。 二回目の実験では、十分な評価者数が確保でき、現在データの分析を行っているところである。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の2024年度は、これまで収集したアメリカ英語母語話者と日本語母語話者の知覚実験のデータの整理と解析、また新たに収集したフランス語母語話者のデータの解析を行い、特にこの三言語を母語とする被験者の知覚実験の比較を子音毎、母音毎に行う。 これまでの解析では、外国語訛度を中心とする三言語の比較を行ってきたが、、他の三つの項目、分かりやすさ、明瞭度、母語話者度における違いについて、比較検証する。特に、日本語母語話者とフランス語母語話者間、また学習者の英語のレベルの違いによるこれらの項目の評価の違いと、その背景となる音声的、音韻的理由を検証する。 昨今の第二言語音声習得で重要視されている、分かりやすさと明瞭度に注目し、どの文節音の日本語訛のどの音声特性が、これらの要因の妨げとなっているかを分析する。世界英語の観点からの日本語訛度の特性と、これまでの英語母語話者の発音を絶対的なモデルとして行われてきた英語の発音教育と一線を画した、英語音声教育法を検討したい。一方で、単に通じる英語ではなく、母語に限らず誰が聞いても分かりやすい英語、発音が明瞭な英語と訛度との相関関係も明らかにする必要があると考えている。
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