研究課題/領域番号 |
19K21653
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分3:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 関西大学 (2023) 千葉科学大学 (2019-2022) |
研究代表者 |
橋爪 烈 関西大学, 文学部, 准教授 (10613862)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2019年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | イブン・スィーナー / 『医学典範』 / 本草学 / アラビア語写本 / イスラーム医学 / 医学典範 / アラビア語医学書 / アラビア語薬学書 / Islamic Medicine / ガレノス / フナイン / イスラム医学 / 薬物書 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究はテキスト研究である。テキストは著者の意図を伝えるものであるが、写本作成の過程で原著のテキストに対して様々な混入や削除等が生じ、このため原著者の意図が改変されて伝わっていることがある。こうしたテキストをできる限り原著テキストに近づける作業を行ったうえで、歴史研究や文学研究に取り組むことが求められるわけであるが、本研究は『医学典範』というイスラム世界から西洋にかけての医学伝統の古典テキストに対して、この作業を行うものである。この作業を土台として、洋の東西で行われた医薬学の伝統に対してイスラム世界での研究調査の成果の存在意義を提示し、東西本草比較に新たな視座を与えることを目指すものである。
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研究成果の概要 |
本研究は、イブン・スィーナー著『医学典範』第2巻本草学書に収録された植物等の性質、薬としての効能等の情報に注目し、これらの情報が彼の前後の時代の本草学書の内容とどの程度一致するか、過去の本草書の内容をどの程度反映させ、またどのような新規情報が加わっているかを調査をすべく、アラビア語本草書の写本を可能な限り収集し、比較検討した。アリフの項目での比較により、『医学典範』は本草学書の主流の項目配列ではないこと、収録数も最大数を誇るイブン・バイタールの本草書と比べても3分の1程度であるが、医学書である『医学典範』自体の有する価値によって、後世の本草書への影響力も一定程度存在することが分かった。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
イブン・スィーナー著『医学典範』は従来第1巻の内容が注目されてきた。これは当時の医学研究の清華を示し、彼の哲学議論を理解するための手がかりとなることが要因である。しかし、本研究で注目した同書第2巻も、収録項目が後世の本草学書と比べて少なくはあるが、ギリシア由来の本草学の成果を凝集し、また薬剤の効能を、同じくギリシア由来の四元素説を土台として説明している点で、当時の医学体系の頂点を示す内容を有していることが見えてきた。この成果を基に、『医学典範』と同時代ないし前後の時代の本草学の伝統とその学問的発展、そしてイスラム世界を超えてその成果がどのように広まったかを比較検討することが可能となるだろう。
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