研究課題/領域番号 |
19K21690
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分7:経済学、経営学およびその関連分野
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
安本 雅典 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (40293526)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2019年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | コア‐周縁技術 / 知識 / オープンな技術プラットフォーム / アーキテクチャ / 技術の統合 / ネットワーク / 標準必須特許(SEP) / 自社/他社引用 / 特許の引用 / 技術仕様 / 標準仕様 / 技術の多様性 / システム知識 / コア-周縁 / 能力構築 / 技術のスピルオーバー / 引用 |
研究開始時の研究の概要 |
技術のスピルオーバーについては、企業の技術的な優位の喪失をはじめとする、負の側面が注目されがちである。一方で技術のスピルオーバーによって技術や産業が発達すること、またそれにともない企業が技術を獲得し、能力を構築することも明らかとなってきている。では、技術のスピルオーバーを通じた技術や産業の発達にともない、いかに企業の能力構築は進むのか。本課題では、技術システムのコア‐周縁の技術群の変遷と企業内外の特許引用のネットワークを検討することで、技術のスピルオーバーにともなう企業の効果的な能力構築の戦略の解明を試みる。
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研究実績の概要 |
本課題では、令和四年度は、これまでに検討してきた、(1)コア‐周縁の技術群とそれらの企業間での分布の違いをふまえ、(2)特許引用にもとづく企業内外の技術のネットワークの変遷と(3)企業による能力構築との関連についての検討を試行的に進めた。 まず、これまでの成果にもとづき、対象となる主要20企業間のコア‐周縁の技術群の保有や引用に注目して、コア-周縁技術の企業内/企業間での引用関係を時系列的に明らかにした。具体的には、独自特許による標準必須特許の引用のデータベースを用いて、コア‐周縁の技術の標準必須特許の引用を時系列的に検討し、主要20社の技術の獲得(他社引用)や強化(自己引用)の傾向を確認した。その結果、広い技術にわたる技術を保有する既存の有力企業や有力通信IC企業は自社内外のコア‐周縁の技術を幅広く獲得し強化してきたのに対し、そうした蓄積に乏しい新興有力企業はもっぱらコア技術に集中して技術を他社から獲得してきたことがわかった。 この点について、さらに、企業の能力を示す、他社からの標準必須特許の被引用件数について、自他社のコア‐周縁の技術の引用件数を説明変数、企業の技術や知識のレベル(コア‐周縁技術の保有量や技術間にわたる知識の密度等)をコントロール変数として重回帰分析を試行的に行った。その結果、オープン化された技術については、コア技術を保有しているだけでは企業の能力として十分ではなく、企業間で分散しているコア‐周縁の技術を適切に活用するための知識を保有しながら、周縁的な技術を活用することが、企業の能力に結び付くことが暫定的に確認できた。令和四年度は、以上の作業を通じて、企業内外にわたるコア‐周縁技術の特許引用の変遷から、企業における能力の形成・蓄積の一端の理解を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文献やデータの収集・整理等(データベース構築やその分析含む)、コロナの感染状況とはあまり関係なく進められる作業については、遅延はあるものの、ある程度は予定通りに進んでいる。一方、国内外のコロナの感染状況の影響がまだ残っており、調査、打ち合わせ、学会、コンファレンス等を通じた検討が困難な場合が生じた。こうした状況のため、調査や打ち合わせによる作業内容や途中成果の確認、成果の発表、それらによる内容の修正や改善が予定通りには進んでおらず、やや遅延が生じている。これにともない、研究の課題や枠組のより詳細な検討、および海外ジャーナル向け原稿執筆については遅れが生じている。これらの点から、(3)とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、先行研究やデータの整理、調査とともに、昨年度までに構築したコア‐周縁の技術の企業内外にわたる引用のデータベースの分析をさらに進め、協調的な標準化によりオープン化されたコア-周縁技術の利活用を通じて、いかに企業の能力構築がなされるのかを検討する。 より具体的には、(1)より的を絞った文献レビューを行い、コア-周縁技術の企業間の移転や企業内での蓄積の面から、協調的な標準化によりオープン化された技術についての企業の能力構築について理解するための理論的な枠組みをさらに検討し洗練させる。一方で、これまでに、(2)コア-周縁技術についての企業内外にわたる技術的な結びつきや、コア-周縁技術の引用関係を時系列的に明らかにしている。(1)と(2)の成果をふまえて、(3)これまでに検討した各企業の知識の多様性や密度とともに、コア‐周縁技術の保有や引用が企業の能力の構築にどのように関係しているのかについて、より詳細な統計的な分析を含め検討する。これらの成果をもとに、標準化によりオープン化された技術の自社内外のコア-周縁技術の探索や活用が、いかに企業の能力構築に結びついているのかを解明し、まとめていく。 成果については、これらまでの成果をこれまでに学術書として出版するためにまとめているが、その刊行を行う。また、学会・研究会やワーキングペーパーによる発表準備を進めるとともに、国内外の論文への投稿をより積極的に行う。国内外で投稿中の関連論文が複数存在するため、これらの刊行も目指す。
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