研究課題/領域番号 |
19K21704
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分7:経済学、経営学およびその関連分野
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
北村 能寛 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (90409566)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2020年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2019年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | 情報シェア / 指値注文 / 情報トレーダー / 為替レート / 価格発見 / Low latency trade (LLT) / 成行注文 / improving order / order flow / 人工知能取引 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、人工知能が取引を支配する今日の外国為替市場において、人間の取引を前提として構築された従来の為替レート・モデルを刷新する実証エビデンスを示す、ことである。今回の研究では、為替レート市場をその直接の分析対象とするが、本研究でのエビデンスは株式市場等、他の人工知能取引が台頭する資産市場における理論モデルを再構築する際にも有用である。 人工知能はその処理速度の速さから、従来の情報トレーダーが採用する「成行」注文ではなく、取引価格の設定が可能な「指値」注文を採用する。ゆえに、これまでの研究で注目されなかった「指値」注文の価格発見過程における役割に注目する。
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研究実績の概要 |
2023年度は、人民元市場の価格発見メカニズムに関する研究を実施した。直物市場だけでなく、先物市場や金利差も考慮し、独自のベクトル自己回帰モデル(VECM)を用いて各要因の情報シェアを計測した。過去の当該分野研究では、直物、先物為替市場の理論的関連性を考慮することがなされておらず、本研究ではその点の改善を試みた。本研究では高頻度データとしてスワップ・レートが利用できるところに着目し、それが金利差の代理変数として作用することを示し、カバーなし金利平価条件を明示的にVECMに組み込んだ。そのモデルにより計算されたオンショア直物人民元の情報シェアが過去の研究に比べ大きく推計された。 特に注目したのは、中国通貨当局が意図的に人民元安を誘導する場合の影響である。この場合、オンショア人民元市場がオフショア人民元市場に与える影響が価格発見において大きくなることが示唆された。これは、人民元の価格形成において、オンショア市場が主導的な役割を果たすことを意味する。2023年4月に開催されたWEAIにて、当研究の報告を行った。しかしながら、予期せぬ円安の影響で追加データの購入が遅れ、一部の分析に遅れが生じた。
今年度実施した研究は、人民元市場における価格発見メカニズムの理解を深め、特に中国通貨政策が市場に与える影響を明らかにすることで、投資家や政策立案者に貢献するものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予期せぬ円安の影響で追加データの購入が遅れ、一部の分析に遅れが生じている。2024年度は現段階で利用可能なデータをもちいて研究をすすめ、2024年度に本研究課題を終了させたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、まず、現段階で得られた実証結果を基に、情報トレーダーの行動に関する積極的指値注文の重要性をさらに掘り下げることが重要である。具体的には、以下の3つの段階を踏んで研究を進める。 第一に、指値注文の価格発見貢献度を分散分解により計測し、特に積極的指値注文の貢献度が高いことを明らかする。これにより、積極的指値注文の価格発見における役割をより詳細に理解することができる。 次に、情報イベントに対する指値注文と成行注文の反応を高頻度データで詳細に分析し、積極的指値注文による価格発見の速度を検証する。この分析により、積極的指値注文が価格発見に与える影響の実際のメカニズムを明らかにする。 最後に、情報イベントにおける成行注文と積極的指値注文の期待実現利益を計算し、積極的指値注文の利益が成行注文を上回ることを示す。これにより、積極的指値注文の優位性をより客観的に証明し、市場参加者がこの方法を選択する理由を明確にする。 以上の推進方策により、現段階での研究成果をより深く理解し、市場における積極的指値注文の重要性を確立する。
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