研究課題
挑戦的研究(萌芽)
本研究では、様々な空間反転対称性の破れを有するファンデルワールス結晶のナノ構造や界面を結晶エンジニアリングを利用して実現し、物質が固有に示すゼロバイアス下光電流効果である、異常光電流効果の観測と機構解明を行う。劈開法や転写法等を用いて、ファンデルワールス結晶の新奇ナノ構造・界面を作製し、ゼロバイアス下光電流効果の空間マッピングを行うことで、異常光電流効果の観測を行う。また、異常光電流効果の詳細な温度・磁場依存性や波長・偏光・方位依存性を調べ、微視的機構の解明と現象の普遍性の検証を通して、ナノ物質における光電変換の新奇手法の提案と学理構築を目指す。
本研究では、2次元ファンデルワールス結晶ヘテロ界面において、特徴的な対称性の破れを創出することで、ナノ物質における新奇光起電力機能の開拓を行った。特に、異なる結晶対称性を持つ2次元結晶である二セレン化タングステンと黒リンの界面において、分極および対称性の破れを反映したゼロバイアス下光電流である異常光電流効果が生じることを発見した。また、光電流の詳細な振る舞いを調べて理論計算と比較することにより、観測された現象が、光励起過程において波動関数の重心がシフトすることで生じる量子力学的効果によって上手く説明できることを明らかにした。
本研究は、ファンデルワールス結晶ナノ構造における特徴的対称性に着目したユニークな研究であり、見出した対称性制御の方法は、様々なナノ構造に広く適応可能な手法である。今後、本成果を契機としたナノ物質における対称性制御を基軸とした物性や機能性開拓への新展開が期待される。また、観測した光電流の密度は、これまで報告されていた異常光電流効果に比べて大きく、ナノ物質の対称性や構造、物質の組み合わせを上手く設計することにより、効率的な太陽電池を開発できる可能性がある。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 6件、 招待講演 12件) 備考 (1件)
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