研究課題/領域番号 |
19K21859
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分13:物性物理学およびその関連分野
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
竹下 聡史 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 研究機関講師 (40450366)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2019年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | 負ミュオンスピンインジェクション / 分子ダイナミクス / 負ミュオンスピン緩和法 / スピン緩和測定 / 分子運動 / スピンインジェクション / 疑似核 |
研究開始時の研究の概要 |
■ゴム弾性を示す高分子では、外場応答に重要なMHz帯の分子運動を明確にすることが、その弾性性能の理解と改革に重要である。しかし、重要な炭素鎖のMHz帯分子運動を直接観測する手段は乏しい。■本提案はスピン偏極した負ミュオンを試料に打ち込むことにより、本来核スピン緩和測定が不可能な12C核にスピンを付与(スピン・インジェクション)し、核スピン緩和測定を実現するものである。この画期的手法により炭素核位置でのMHz帯ダイナミクス観測を実現する。本手法が確立されれば、核スピンを持たない核でも核スピン緩和測定が可能となり、多様な材料のダイナミクスの理解も格段に進展させ、新たな材料の創生につながる。
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研究実績の概要 |
本研究は、負ミュオンによるスピン緩和法を応用することにより、核スピンを持たない12C核において核スピン緩和測定を可能とする極めて画期的な手法(負ミュオンスピンインジェクション法)を実現するものである。さらに本手法応用することにより、高分子材料で重要、かつ他の測定手法では観測が容易ではないMHz帯における分子運動を同定する事を目的とする。 2021年度に、やや複雑な系であるトルエン、およびポリブタジエンへ本手法の適用を試み、一つの水素原子核のスピンと負ミュオンのスピンの2スピン間の双極子磁場による超微細相互作用に対応する信号が得られ、さらにMHz領域における超微細相互作用の揺らぎ周波数をとらえた可能性が期待される結果を得た。一方で、負の電荷をもつミュオンが原子核に捕獲されることから、系がクーロン爆発を起こしている可能性について検証する必要性がでてきた。そこで、2022年度においてはこの点を検証するために、極めてシンプルな構造を有するエチレンでの実験を行った。その結果、当初想定していたクーロン爆発が生じない単純なミュオニックエチレンの構造では説明ができない構造を取っていることが明らかとなった。可能性としては、実際にクーロン爆発が生じているケース、及び一旦ミュオニックエチレンとなった後、周囲のエチレンと化学反応し、結合している構造を取っているケースが考えられるが、現時点ではその切り分けができていない。 今年度は、精密な第一原理計算を実施して化学構造の同定を行うとともに、ミュオニックエタン等の二重結合を有しない系に対する実験を行い、クーロン爆発の有無の検証を行うとともに、本手法により得られる微視的なダイナミクスの情報を明らかにしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ミュオニックエチレンの実験では、超微細相互作用の測定に成功した。これにより、クーロン爆発が生じているかどうかの検証を行うためのデータを得ることができた。一方で、得られた超微細相互作用の値は、単純なミュオニックエチレンでは説明できず、クーロン爆発の有無を検証するにあたり、より精密な第一原理計算や、二重結合を伴わない系における実験の必要性が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、ミュオニックエチレン、及び関連する負ミュオン化合物に関する精密な第一原理計算を実施し、実験で得られた値から、負ミュオンインジェクションを行った場合の化学構造の同定を行うとともに、ミュオニックエタン等の二重結合を有しない系に対する実験を行い、クーロン爆発の有無の検証を行うとともに、本手法により得られる微視的なダイナミクスの情報を明らかにしていく。
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