研究課題
挑戦的研究(萌芽)
現在、クリーンエネルギーの主要な元素として水素が注目されている。水素が果たす役割を理解するためには、物質表面上に吸着した水素の原子配置を実験的に確定することが第一歩である。物質表面の原子配置の決定には回折法が有力な手法であるが、最も軽い元素である水素からの回折強度は微弱であるため、従来、回折法での表面上の水素の位置の決定は困難とされてきた。本研究では、水素位置決定のための反射高速電子回折(RHEED)の新たな測定モードを提案し、電子レンズの開発を通して表面水素の原子位置の高精度決定を試みる。
本研究では、物質表面上の水素の原子配置を実験的に決定するために、反射高速電子回折(RHEED)専用の磁界レンズシステムを開発した。本システムは3段の磁界レンズから構成され、設計上約20倍まで回折パターンを拡大できる。実際にSi(111)-7×7表面を用いて、スクリーンとカメラの位置を変化させることなく回折パターンを拡大できることを確認した。これにより、水素の位置変化に敏感な低散乱角領域の回折強度の測定が可能となった。
現在、水素はクリーンなエネルギー媒体として注目されている。実際、燃料電池などの実用化も進んでいる。しかし、水素は検出しにくい元素であるがゆえにまだまだ未知な点が多い。本研究は、水素と物質が反応する最前線である表面水素の原子配置の高精度決定に向けた実験手法開発である。今後、本研究で開発した電子レンズシステムを活用し、表面水素の原子配置の解明が実施される。この基礎的な知見を基に、物質表面における水素の理解が促進することが期待される。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 図書 (2件)
Physical Review B
巻: 102 号: 20
10.1103/physrevb.102.201102
Physical Review Materials
巻: 4 号: 6 ページ: 0640051-6
10.1103/physrevmaterials.4.064005
Carbon
巻: 157 ページ: 857-862
10.1016/j.carbon.2019.10.070
陽電子科学
巻: 13 ページ: 3-10
40022010003