研究課題/領域番号 |
19K22321
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分39:生産環境農学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
今野 浩太郎 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 上級研究員 (00355744)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2020年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2019年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | シュウ酸カルシウム針状結晶 / 活性増強効果 / 針効果 / 相乗的耐虫効果 / キチナーゼ / Family18キチナーゼ / Family19キチナーゼ / Trichoderma viride / サトイモ科植物 / ポトス / 昆虫摂食拒否行動誘起物質 / 痛み物質 / セロトニン / 神経伝達物質 / シュウシュウ酸カルシウム針状結晶 / 昆虫摂食拒否行動 / 痛み / システインプロテアーゼ / 親水親油性 / 表面物質 / raphide / 耐虫性物質増効果 / 摂食拒否行動誘起物質 / 神経伝達物質・痛み物質 / 植物耐虫性物質 / 耐虫性増強物質 / バリア―通過 / ターゲット到達 |
研究開始時の研究の概要 |
本課題では植物耐虫物質の昆虫体内・組織内・細胞内のターゲット分子への到達を容易にすることで耐虫物質の働きを顕著に増強する物質を探索し、その構造と増強メカニズム・効果を解明する。さらに、新規増強物質を用いて、植物の天然耐虫性物質、人工的な農薬、昆虫の遺伝子発現を抑制するRNAiなどを、ターゲット分子が存在する害虫組織・細胞内に到達させ強力に機能させ害虫を制御する方法を開発する。組織・細胞浸透透過性が低い親水性低分子、ペプチド、タンパク質、酵素、核酸、は耐虫性増強剤の存在下で耐虫効果を持つ可能性が高く、このような新規耐虫性物質の探索・同定・害虫制御剤としての利用法開発も行う。
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研究実績の概要 |
これまでに、システインプロテアーゼがシュウ酸カルシウム針状結晶と共存すると毒性が増強され致死毒性を示すことを明らかにし針効果と呼んだ。このようなシュウ酸カルシウム針状結晶による他の物質の昆虫に対する特性の増強効果はStreptomyces griseus由来のキチナーゼやヤマノイモのキチナーゼ活性(いずれも単独では昆虫に対する毒性が非常に低いあるいは検出できない)に対しても検出され、シュウ酸カルシウム共存下でこれらのキチナーゼ(活性)は顕著な致死活性を示した。ヤマノイモおよびStreptomyces griseusのキチナーゼは共にFamily19という種類のキチナーゼである。Family19のキチナーゼは植物に存在するが動物には存在せず、動物のキチナーゼはFamily18に属す。Family18のキチナーゼがFamily19のキチナーゼ同様に針状結晶の存在下で昆虫毒性を示すかは未知だった。(プロテアーゼではセリンプロテアーゼはシステインプロテアーゼと違いシュウ酸カルシウム共存下で昆虫毒性を示さない。)そこでFamily18キチナーゼと針状結晶の共存条件下の増強効果の確認を試みた結果、Serratia marcescensのキチナーゼ(Family 18)では(市販試薬の酵素比活性の低さのためか)針状結晶存在時に致死効果は確認できなかったが、Trichoderma viride由来のキチナーゼ(Family18)単独では致死毒性は低かったが(4%の高濃度のキチナーゼ含む人工飼料を摂食させたエリサンで致死率30-40%)なのに対し針状結晶共存下では1%でも50%前後の致死効果があった(4%では致死率100%)。以上、植物に多いFamily19だけでなく、動物に多いFamily18のキチナーゼでもキチナーゼ一般の性質として、針状結晶共存下での顕著な増強・致死効果が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
植物に多いFamily19のキチナーゼ(ヤマノイモ由来、Streptomyces griseus由来)だけでなく、Family18のキチナーゼ(Trichoderma viride由来)でも同様にシュウ酸カルシウム針状結晶存在下で顕著に増強された強力な殺虫活性・成長阻害活性を持つことが明らかになった。これは顕著な研究の進展である。 一方昨年度までに発見されたサトイモ科植物におけるシュウ酸カルシウム針状結晶共存下で見られる強力な摂食阻害活性に関し針状結晶表面に存在する物質に関する研究は、植物組織内で針状結晶が存在している異形細胞のみを無傷で回収する方法が未だに見つからなかったため期待した進展はなかった。この二つを合わせえると 上記の2点を合わせて考えると概ね順調に進展しているといえると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
シュウ酸カルシウム針状結晶とキチナーゼの相乗的耐虫効果については早期の論文化を目指す。昨年度までに我々が発見していた、サトイモ科植物におけるシュウ酸カルシウム針状結晶が関わる昆虫に対する強い摂食拒否活性についての研究も進める。現在のところサトイモ科植物にはセロトニンが含まれていることが報告されており、さらに我々の昨年度までの研究によりセロトニンとシュウ酸カルシウム針状結晶を共存させると摂食拒否活性を示すことを示している。そこで、サトイモの葉の細胞においてシュウ酸カルシウム針状結晶を含む異形細胞中に針とセロトニンが共存して含まれる可能性を現在我々は仮説として持っている。しかし、現在に至りまで、サトイモ科植物の異形細胞、特に針状結晶を含む液胞を無傷で回収することに我々は成功していない。そこで本年度はサトイモ科植物から異形細胞(時に針状結晶を含む液胞)を無傷で回収し、液胞内物質の分析をすることにより(セロトニン等の痛み物質の存在を明らかにすることにより)サトイモ科植物葉の昆虫に対する摂食阻害活性(および人間に対する痛み活性)の生理・物質的メカニズムの解明を行う計画である。
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